第11章 バラと琥珀糖
どう言う事だろうか?
ここにあるのは107本のバラのはず
欲しい数のバラが
なかったと言う事だろうか?
「そして、これが…108本目のバラだ…
受け取ってもらえるだろうか?」
そう言ってもう1本の
108本目のバラをあげはに差し出す
その 最後の1本が特別なバラなのは
明らかに分かった
その1輪だけ他のバラと品種が違っていて
同じ赤のバラでも質感や色味も
香りも全然違うし
そして何より大輪だった
「君なら、知っているかと思ったが
…108本のバラの意味は知っているか?」
108本の バラの花束の意味は……
思い出した 108本のバラの花束の意味
蜜璃ちゃんが
うっとりとしながら言っていた言葉
ー『いつか 私も108本のバラを抱えた
素敵な殿方にプロポーズされてみたいわぁ〜』ー
「あのっ、杏寿郎さんっ…これ…もしかして…」
「あの後、見舞いに来てくれた甘露寺を
追いかけた時、宇髄に言われたんだ」
「何をですか?」
「求婚するなら、花の一つでも
用意して2人きりでしろとな」
そう言われてみれば
彼が私に何度も求婚する事はあったが
いつもの大声で
周りに人がいる時ばっかりだったような
「あげは」
甘く熱い声で名前を呼ばれて
そっと手を重ねられて握られると
彼の赤い瞳に見つめられて
吸い込まれそうになる
囁くような優しい声で
「俺の、気持ちを…
受け取っては貰えないだろうか?
俺と、どうか、結婚して欲しい…あげは」
結婚して欲しい……と
そう 囁かれて
ドキドキと胸が跳ねているのを感じる
彼の気持ちは知っているのに
どうしてドキドキしてしまうのか…
「受け取って貰えるだろうか?あげは」
「は、…はい」
最後の彼の108本目のバラを
杏寿郎の手から受け取ると
バラを持っている私の手に
杏寿郎が手を添えて
上から包むように握らせると
あげはの耳元に顔を寄せて
「花の、根元の辺りを見てくれないか?」
バラの花の根元と言うと
ローズヒップの部分だろうか?
上から花を見ていても
大輪なのでその部分が見えないから
花を倒して横に向けて見ると
何か銀色に輝く物が見えた
ー指輪ーだ