第10章 追憶 煉獄家にて
「ちったぁ、やる様だが。こんなもんか?
…それとも折れた骨が気になって、
力が入らねぇか?」
挑発して煽るような槇寿郎の物言いに
あげはがムッと顔を顰めた
「言いましたね?…知りませんからね?
ちゃんと受けて下さいよ?でないと…」
死にますよ?と言って笑うと
深く息を吸い込み木刀を構え直した
あの構え そして深い水の呼吸
踏み込みの形…
あれが 来るな…
あれは盛炎のうねりでは受け止め切れん
「水の呼吸 拾の型 生生流転!!」
あげはの纏っている水がうねりをあげて
流れを作り 龍へと姿を変えて行く
「炎の呼吸 伍の型 炎虎!!」
あげはの水の龍と槇寿郎の炎の虎が
大きく膨れ上がり 激しくぶつかり合う
あげはの龍の勢いがそれを押して
水に虎が飲み込まれて行く
「炎虎!!」
消える前にもう一度 炎の虎を放つと
ドォオオオンッーー
何かが爆発でもした様な音がして
「伍の型 炎虎ぉ!!」
更に追撃を槇寿郎が繰り出した
音で目を覚ました 千寿郎が
目の前の大きな水の龍と
2匹の炎の虎の圧に
その場にへたり込んでしまった
「…ハァ、ハァ…、体は正直だな…」
呼吸を連発した事で
槇寿郎は肩で息をしていた
「水…柱にでも、なれたんじゃないのか?」
「水柱は、義勇がいますし。それに
私は…、柱を辞めた身ですよ?」
だが この家で最初に宣言した通りに
柱をしていた時よりも
技に磨きが掛かっている
コイツの生生流転を炎虎
3回出さないと止められない程に
「強く…なったな。煉獄家の嫁なら…、
それぐらいは当然だが」
「え?煉獄家の嫁は、名家のお嬢様では
なかったのですか?」
「お前は、お嬢様じゃねぇから、
剣ぐらい出来て当然だがな」
そう言って満更でもない笑みを浮かべた
ガラッと離れの襖が開いて
杏寿郎が出てくると手紙を自分の鴉に託した
「あまり、朝早くから大きな音を立てると
近所迷惑になりますよ?父上」
諫めるように杏寿郎に言われて
「すまない」
「…すみません」
と2人が口々に謝罪を述べた
「が、俺としてはあげは、
君の鏡の呼吸が見てみたいが。
千寿郎もそう思わないか?
彼女にしか使えない呼吸だぞ」