第10章 追憶 煉獄家にて
「君は…俺の事は、
甘やかしてはくれないのか?」
「今日は、甘えたい…気分なんですか?」
こうやって拗ねてる所を見ると
まるで 大きな子供みたいだなぁ
「甘えん坊な、杏寿郎さんは、
私だけの特権でしょうか?」
よしよしとあげはが手を伸ばして
杏寿郎の頭を撫で撫でする
そう言われて見れば
誰かに甘えたり 弱音を吐いたり
そうするのは強い者の行動ではないと
自分の中で否定していたな ずっと
「そうだな、そうかも…しれないな」
「いいですよ、甘えてもらっても…」
「俺としては、
君にも甘えてもらいたいがな…」
「えぇ?甘える…ですか?」
「俺が思うに、
甘えたりしない方じゃないのか?
自分の気持ちに素直になるのも、
悪い事じゃないと思うが?」
俺の言葉に何か考え込んでいるようで
あげはは 布団に顔を押し付けたと思うと
顔をこちらへ向けて自分の手を口元へ添えて
千寿郎を起こさないくらいの声で
「杏寿郎さんは、私を甘やかしたいんですか?
それこそ、そんな事して
…手のつけようのない女になっちゃても
知りませんからね?自分がそうしたんだから」
ちょっと拗ねた様な顔はしているが
怒ってるわけでもないし
「俺にだけ、そうしてくれるのなら
…本望だが?」
「杏寿郎さんには、…大分出してるつもり
…ですよ?これでも」
「そう言われると、自惚れて
しまいそうだが?俺に、して欲しい事が
あれば、言ってくれまいか?」
即答での返事はなかった
しばらく考えてる様だったがあげはが
「あの、何でも?いいんですか?」
「ああ、何でもいいぞ!」
「だったら…、頭を撫でて貰っても…?」
「それは、構わないが…こうか?」
ポンポンと頭を撫でられる
そうされたかと思っていると
それから添えるように置かれて
よしよしと撫でられる
「…ふふっ」
頭を撫でられて嬉しそうにして
目を細めてあげはが笑った
「そんなに喜ばれると、もっとしたくなるな」
よしよしから 撫で撫でになって
そのまましばらく撫でられる
彼女の艶やかな髪の感触がもっと
触れてみたくなって
「あげは…」