第2章 私は彼を知らない
「君は柱に戻る気はあるのか?」
「ありませんよ」
キッパリと即答されてしまった
「柱が欠けてもか?」
「なりたくもないですし、
なるつもりもないですよ。
それに柱に拘る理由が、
私にはないですし。
鬼を狩るのに関係ないですから」
柱である事に
何の意味もないと言いたげだ
あの時の父上の言葉を思い出す
ー柱になったから何だー
彼女も父上と同じなのか?
柱である事はどうでもいいのか?
俺はずっと炎柱になるべく育てられ
炎柱の名に恥じぬよう
剣を磨いてきた
他の隊士からも
柱は憧れの存在であるはずなのに
何かを感じ取って
杏寿郎が顔を上げた
「ーーー!!」
鬼の気配だ それも数が多い
彼女も同様に鬼の気配に
気付いている様だった
この距離から 細かな鬼の気配を探りとり
鬼の数や 位置を把握できるのも
柱として索敵する能力を高めて来た者にしか
なし得る事ではない
「…1、2、3、……4、…5、6、…7体ですね」
彼女の索敵能力 完璧に等しい
時計回りで現在地からの鬼の方角全て正解だ
「よもや、君の感じている物は正しい。
俺が、4時から10時までの4体を引き受ける!」
鬼は基本的に
群れる事のない生き物ではあるが
時としてお互いの利に叶う
時には群れる事もありうる
キイッー 馬車の戸を開いて降り立つと
腰の日輪刀を抜いた
「忌々しい鬼どもめ。
この煉獄の赫き炎刀が
お前らを骨まで焼き尽くす!!」
腰を落として 力強く踏み込むと
一気に鬼との間合いを
一足で飛んで詰めると
横なぎに薙ぎ払った
「炎の呼吸 壱の型 不知火!!」
着地するなり すぐさま
刀を円を描いて下から上に振り上げる
「炎の呼吸 弍の型 昇り炎天!」
スゥウウウウー ザバァ
水があげはの体を取り囲む
あれは 水の呼吸?
彼女は鏡柱だったはずでは?
水の呼吸は基本の呼吸の中でも歴史が古い
鬼殺隊の中でも水の呼吸を使う隊士は多い
「水の呼吸 肆の型 打ち潮」
ザンッ ズバッ
斬撃を淀みのない
水の流れのように繋げていくと
2体の鬼の首を落とした
冨岡の使う水の呼吸と同じだが
女性の筋肉特有の
しなやかさが加わって
力強さには欠くが
流麗で美しい剣捌きだ