第1章 序章
俺のすぐ近くにあるのは
先に入山していた隊士の物だろう
どの死体も腹が裂かれて内臓を
引きずり出した形跡がある
女の鬼が跨っている隊士はまだ息があり
苦しそうな声を漏らしていた
その女の鬼は嬌声を上げ
呼吸を乱しながら
裂いた男の腹から小腸を引っ張り出すと
自分の体に纏わり付かせ
時折それを齧りつつ
いたぶり楽しんでいた
ああ 吐きそうだ
『あら?もう死んじゃったの?もっと、
遊びたかったのに…』
玩具が動かなくなって
つまらなくなったのか
動かないうめき声を出さない
死体には興味がなくなったのか
ゆったりとした動きで
鬼がこちらへ近づいて来るのが見えた
刀は腰にあるが
身体が縛られており自由が効かない
ーーー殺されるのか?ー俺はー
こんな所で?
じぃーと品定めでもするように
鬼は俺の顔を見ると
ふふふふと不敵な笑みを浮かべた
『…まだ、子供ねぇ。
食べるには早すぎるわぁ。
後、3年位育ててから食べようかなぁ?』
気配を感じなかった
ゴロリ 鬼の頸が断たれて
地面に転がった
崩れ落ちていく 鬼の体の奥に
ふわりと舞い降りる白い影が見えた
白い銀糸の刺繍の施された
羽織が月に照らされて
白く輝いて見える
美しい…天女の羽衣の様だな…
ー鬼殺隊か?ー
月明かりが洞窟の入り口から差し込んで
その顔を伺い知れないが
『…君、大丈夫?
遅くなっちゃってごめんね。
…でも、良かった、間に合って』
若い女性の声だった
ヒュン と女性が刀を振ると
杏寿郎の自由を奪っていた縄が切れる
『ああ、なんと言う事だ、酷たらしい。
南無阿弥陀仏』
7尺以上の僧侶のような出立ちの男が
地面に転がる死体に手を合わせる
「悲鳴嶼さんは、その子連れて山を降りて
人を呼んでもらえませんか?まだ4人、
息のある人が居ます。内臓の一部に
損傷がありますが、
小腸なので問題ないと思います」
「わかった、君の言う通り人を呼んで来よう」
「ありがとうございます、助かります」
あの夜 俺達を助けに山に入って来たのは
ー柱ーと呼ばれる人なのだと聞いた
俺はあの後 丸2日眠っていたらしい
蝶屋敷で食事までご馳走になり
すっかり体調を取り戻した俺は
任務へ戻ることにした