第10章 追憶 煉獄家にて
「君は、洋食も作れるのか?」
「ええ、父が洋食を好まれる方だったので…」
その日の夕食は洋食で
元々彼女の父が洋食を好んでいて
あげは自身が洋食を
作っていたからなのか
机の上にサラダにスープ
ハンバーグにエビフライ
コロッケにオムライスに グラタンもあった
シチューもありますよーとあげはが
鍋を運んで来て
その机の上に並んでいる料理は
レストランで出される物と見劣りする事もなく
それにしても もの凄い 量だな
使用人や千寿郎に手伝ってもらったとは言えど
まあ うちには杏寿郎がいるので
これぐらいあってもいいのかもしれんが
「さぁさぁ、冷めない内に」
とニコニコ顔のあげはに促されて
出された料理を杏寿郎が口に運ぶと
「うまい!美味いな!君は、
洋食屋でも…できそうだな!」
と絶賛したので
千寿郎もそれに続いて食べてみると
「本当に、凄く…美味しいです。
以前、レストランで頂いたものより…」
「え?本当?そう言われたら照れちゃうなぁ〜。
たくさんあるし、いっぱい食べてね?
デザートにババロアもあるから」
「……まぁ、悪く…ないがな」
そう言ってる槇寿郎の箸も
いつもより進んでいるようにあったので
あげはがニコニコしてるのが分かって
槇寿郎は余計に意地を張りたくもなったが
「美味しいですか?槇寿郎様」
と圧を掛けながら尋ねられて
「ああ、別に。不味くは…ない」
と槇寿郎が小さい声で答えた
この家で過ごす最後の夜
明日にはここを立たないといけない
うす明かりの中で
あげはは寝る支度を整えていた
布団の上でくつろぎながら
本を読んでいた杏寿郎が枕元に
読み掛けていた本を置くと
「あげは、今日は…もう少し…
先へ進みたいと思うのだが、どうだろうか?」
と杏寿郎が提案して来た
もう少し先とは どの辺りなのだろうか?
口を吸ってはいるのだから…その先となると
私の身体に 触れたいと…言う事なのかな?
「えーっと、そう言われますと、
具体的にどのような…感じの」
具体的にしたいと思っている事を
示せと言われてしまったので
「むっ、具体的に…か、難しいが…」
「難しいんですか?だったら…」
「ああ、そうだ。君の…唇以外の所に
口付けてもいいだろうか?」