第10章 追憶 煉獄家にて
「君は、…人の目を集めすぎるな」
「?」
当の本人は自覚がないのか
キョトンとしている
ギュッと指を絡めて繋いでいた手に
力を込められてしまって
ドキドキしてしまったのは
言うまでもなく
サーカスが初めてだった千寿郎君は
最初から最後まで本当に楽しそうで
なんだかんだでつまらなさうに言いつつも
槇寿郎様も楽しんでいた様だった
私の隣で見ていた人は
サーカス見てたのかと言いたくなる程に
合間合間にちょっかいを出してきて
こっそり手を握ったり
髪を撫でたり
耳打ちをするふりをして口付けたり
私は千寿郎君や槇寿郎様がいるのに
バレやしないかとヒヤヒヤしていて
サーカスに集中できなかったし
肘でツンツンとあげはが杏寿郎を突いて
「…杏寿郎さんは、ちょっと、
ふざけ過ぎですからね?」
「俺は、いつでも、真剣だが?」
ふざけてはいないと言いたい様だけど
そう言う意味じゃないのにな
サーカスの帰り道にふと槇寿郎が
あげはの名を呼んだ
「あげは」
「はい。どうかなさいましたか?槇寿郎様」
「お前、いい女になったな。あげは。
まぁ、瑠火の次にだがな、しかし
…あれだな、杏寿郎には丁度いいだろ」
「褒めるのか、貶すのか
どっちかにして下さいよ」
「父上っ!…もう少し、言い方を…」
杏寿郎が父の物言いを諌めようとした時
「いいですって、ちゃんと分かってますから」
それが槇寿郎様らしい
褒め言葉なのは分かってたから
「待ってはないが…、いつでも帰って来い」
と決まりの悪そうに言って
そっぽ向いてしまった
そんな所もまた 槇寿郎様らしい
駅前で皆で昼食を済ませて
そのまま駅前をブラブラと歩く
「皆様は、洋食はお嫌いですか?」
「洋食か!悪くないな。俺は洋食も好きだが、
それがどうかしたか?」
「あまり食べ慣れてはいませんが…、
美味しいと思います」
「それがどうかしたのか?」
2人はちゃんと答えたのに
槇寿郎だけがどっちつかずな返答だ
「好きか嫌いか言えないなら、
食べられるかだけ教えてもらっても?」
「食うには、食えるが…」
あげはに聞かれて槇寿郎が答えた
「じゃあ、今夜は洋食にしましょう!
せっかくここまで来た事ですし、
夕飯の買い出しもしてしまいしょう」