第83章 炎屋敷での一時
善逸は炭治郎の話を聞きながら
ゴソゴソと布団に潜り込む
「ねぇ、炭治郎もさ、
休める内に…休んどいたら?
煉獄さんも言ってたじゃんか。
休息も立派な鍛錬の内だって…さ」
「ああ、そうだな。
俺ももうちょっとしたら休むよ。
ありがとう善逸」
「ふあぁ~、おやすみぃ~炭治郎」
善逸がこっちに気を遣ってくれたのが
ゴロンと背中をこちらに向けて
すっぽりと布団をかぶってしまった
俺達が使わせて貰って居る部屋にある
文机に炭治郎は向かって座って居て
その机の上に…屋敷に来る途中に
カナヲに渡そうと思って購入した
蝶の螺鈿細工の鏡と
自分で選んで購入した蝶のブローチを
机の上に音を立てない様にしてそっと置くと
その隣に…カナヲから預った
あのコインを置いた
そのまま静かに…
炭治郎はしばらくそれを眺めていた
カナヲにコインを…
ちゃんと…自分の手で返して
それから…お弁当のお礼…渡さないとな…
炭治郎の目には…その3つの品物は
どこかの神社のお守りよりも…よっぽど
効果がある様な気がしていた
ーーー
ーー
ー
その頃…炎屋敷の中で唯一
板の間の洋間にした部屋に
しのぶと蜜璃は過ごしていた
「あの~、甘露寺さん。
伊黒さんは…甘露寺さんが
この話に参加すると知って…その、
反対とかは…しなかったんですか?」
「うん、伊黒さん?
伊黒さんなら大丈夫よ?
でもね…、
伊黒さんは、今日の為にね
新しい縞々の靴下をくれたのっ~」
くねくねと蜜璃が自分の両頬を
自分の手で押さえながら
自分の身体をくねらせていて
バシンッバシンと音がする程の力で
隣に居たしのぶの背中を
思い切り叩いて来る
「痛いっ…、
甘露寺さん、痛いですからっ。
そうですか…あの伊黒さんが、
そんな事を…なさったのですね…」