第10章 追憶 煉獄家にて
サーカスのテントがある
駅の方の広場へと向かう
駅前は賑やかで人通りも多い
あの時と同じように駅前のロータリーの辺りに
ピエロの一団がいて
千寿郎に青い風船を渡して来た
杏寿郎が風船を持っている
ピエロに何かを話して
ピンク色の風船を受け取ると
それを持ってあげはの元へ戻って来た
「これを、君に」
「いつぞやの、…風船の代わりですか?」
差し出された風船をあげはが受け取った
風船を持った彼女が
申し訳なさそうな顔をしてこちらを見ていた
「あの、私…杏寿郎さんに、
謝りたい事がありまして…
あの時、頂いたオルゴールなのですが…」
「ああ、アレか!気にする必要はない!
あの状況で、あの戦いの中では
仕方ない事だ。それに…」
また 贈ればいいだけだからなと笑った
「兄上!」
「どうした?千寿郎」
隣を歩いていた 千寿郎が声をかけて来て
「お二人は、お手は…繋がれないのですか?」
サーカスへと向かう人の流れの中に
カップルと思しき姿がいくつかあった
皆仲睦まじく 手を繋いだり腕を組んだり
中には腰に手を回しているのもいたが
「だ、そうだぞ!どうだ?あげは」
と杏寿郎があげはに手を差し出して来て
その手を取ってそのまま繋いで歩き始める
しばらく歩いて
あげはがハッとして隣の杏寿郎の顔を見る
「嫌か?」
とあげはにしか聞こえないような声で
尋ねて来た
普通に繋いでた手を指を絡めた
恋人繋ぎにされたからだ
「…いやでは、ないです…けども」
「なら、このままでいいな」
この髪の色が3人も並べば目立つから
周囲の視線を集めているのかと思っていたが
そうではない様だった
視線を周囲のそれも男性が向けているのは
どうやら俺の隣の方…だな
彼女は上背もあり
スラリと長い手足をしている
体つきもスリムだが
しっかりと出ている所は出ているし
スタイルがかなり
贔屓目で見ずとも良い方だと思う
洋装の映える スタイルなのだ
洋装は西洋人の体型に合わせてるのだ
寸胴で背の低い日本人には映えるはずもない
「見てー、あの人、お人形さんみたいー」
小さな女の子が母親の手を引いてそう言った
どうやら彼女を見ていたのは
男性だけではなかったようだ