第82章 集いし 炎屋敷
「……肝心な事…言いやがれねぇし…、
損な…男だな…、お前も…。
……けど、よ。これだけは言ってやる。
透真…、お前は…最高に…いい男だし、
悔しいが…俺よりもな…。それに…、
煉獄も奴も…、間違いねぇよ…。
アイツなら…。お前が…あげはに残す
しがらみも…色んなもんも…全部、
愛せる……そんな男だからな…間違いねぇ」
ふぅ――っと細く息を吐き出すと
ふっと…宇髄が口の端を曲げる
「だから…お前は…安心してろ…。
随分待たせちまったが…、
今夜…お前のその望み…叶えてやる」
宇髄がそう言うと…その狂い咲きの
桜の木の元を後にした
ーーー
ーー
ー
その頃…煉獄家を出発した
千寿郎と望月は
槇寿郎からの使いの品を持って
馬車に揺られている最中だった
もう後…15分ほどすれば
兄上が姉上と一緒に暮らしている炎屋敷へと
馬車は到着すると言う事だった
千寿郎は馬車の窓から
流れる外の景色を眺めていた
ぬっと…目の前に逆さまの生首が突然現れて
叫び出しそうになった所を
しぃ――――とその生首が内緒の身振りをして
千寿郎は慌てて自分の口を塞いだ
よくよくその突然現れた生首を見ると
それは…二人の結納の時にも出会った
音柱の宇髄天元の姿だと気が付いて
「なぁ、もしかしてさ。これから
お前も、煉獄のトコ…行く感じだったらさ。
俺の事も、乗せてくんね?」
「とは…仰られますが、音柱様。
馬車は現在走行中でして…」
コンコンと宇髄が馬車の窓を叩いて
ここを開いてくれと合図をして来る
馬車の窓を言われるままに千寿郎が開くと
ぶわっと風が外から馬車の内部に吹き込んで来て
そしてピタッとその風が収まった頃には
宇髄は最初から馬車に乗っていたかのような
そんな涼し気な顔をして座っていて
全開に開いていた窓もキッチリと閉められていた