第81章 その琥珀糖はまるで
『水』
それは…特定の形を…持たない物
器の中に注げば
水はその器の形となる…
その…変化…が柔軟に出来るのは…
水が流れゆく物であるが故…
俺も…流れゆくままに…
自分で…戦いの流れを…作ろうと
無理をして気に負い過ぎるな…と言う…
その言葉は…
なんとも鱗滝さんらしい…と…
義勇も…感じてしまう様な
励ましの手紙であった
カサッと…音を立てながら義勇が
その手紙を元に戻すと
自分の隊服の胸のポケットにしまう
自分の目の前にあるのは
1振りの 日輪刀だった
亀甲の鍔に 青い刀身
そして…その刀身に刻まれている
『悪鬼滅殺』の4文字
自分の師範であった…元水柱の
三上透真の日輪刀だ
義勇が透真の日輪刀にその手を伸ばすと
刀を鞘から払った
青い…刀身が…輝いて居る様に見える
大業物の…名刀だ…
最強の水柱と…謳われていた
三上透真が振るうのに相応しい1振りだ
そして…師範が…持つべきこの刀は
何故か俺の目の前にある
これも…因果…なのか…
これが…師範の…望みなのだと…
あげはにも…諭されてしまったが…
義勇がその日輪刀を持ち上げて
掲げる様にして持つと
その青みを帯びた刀身に義勇の顔が映る
『見レタモンジャ…無イノウ…義勇』
「五月蠅いぞ。勘三郎。
だが…確かに…酷い顔…だな…
勘三郎、…俺の手の平を突いてくれ」
『イイノカ?義勇』
「ああ、お前にしか頼めないからな。頼む」
義勇のその言葉に
勘三郎は少しの間戸惑った様子だったが
容赦ない感じの痛さで
今も…左手の甲がジンジンとして疼くので
彼なりに…俺は…励ましを受けたのだろう
置いていた日輪刀を鞘に納めると
すくっと義勇が立ち上がった
立ち上がった義勇を下から勘三郎が
目を細めながら見上げていて
『立派二…、ナッタノウ…義勇』