第81章 その琥珀糖はまるで
俺のクセは…一緒にずっと修行をしてたし
一時…だったとは言え…
あげはは俺の師範だったんだから
俺のクセは…ある意味…鱗滝さんと同じぐらい…
あげはは知っている…んだろうな…
炭治郎達にも…この呼吸法を指導してると
そんな話を…聞いたが…
諸刃の刃…だと…あげはからは聞いていると
蝶屋敷で出会った炭治郎から話は聞いた
ピタッと禊をしていた手を義勇が止めて
考え事ばかりしていた…事に気が付いた
「心を…、無にせねば…、
己を極限まで削り取り、無となる。
そうせねば、俺の刀は…師範には届くまい…」
でないと…俺は 揺らいでしまう
師範に刃を向ける事を 躊躇してしまう
戦いの場で…迷う事… それは死を意味する
そして… この戦いに置いては
自分の死が…誰かの死を招くかも知れない
揺れるな 義勇
鱗滝さんの言葉を…義勇は思い出していた
バサバサっと…羽音が聞こえて
勘三郎が手紙を持って戻って来て
自分の心中を綴った手紙を
師である鱗滝左近次に宛てた手紙を
勘三郎に託していたのだが…
その返事を…勘三郎が持って戻って来て
『義勇…間二合ッタ…カノ?』
義勇が勘三郎に手を伸ばすと
よしよしとその身体を撫でた
「ああ。間に合ってる。助かった」
『ソウカ……』
「ああ、勘三郎…良くやってくれた。
下手な…何かよりも…、俺には…
これが一番…、薬にも灸にもなるからな」
自分の師範である…鱗滝からの手紙に
義勇が静かに目を通した
「水は…流れにままに…流れゆく…物…か…」
その手紙はハッキリとした
励ましの言葉では無かったが
義勇の…心の中に…スッと…
自然に落ちて来る
「そして、…俺も…その水の流れを作る…
…水の…中の一部…に過ぎん……か…」