第81章 その琥珀糖はまるで
「やはり…、この紅を…
あの主人に勧められて買って良かったな。
あげは…、こんなにも…君を…
美しく見せてくれるからな…。
このまま…、小町紅を差した君を
人前に晒すのが…惜しくなってしまう程にな」
「その目が…私のこちらに
釘付けになってしまう…程だ…とでも、
貴方のその口から、おっしゃって
頂けるのでありますか?杏寿郎…」
「既に…俺の目は…、君の唇から…
視線を逸らそうにも、逸らす事が出来ずに。
囚われてしまったままに
なってしまってるがな…」
杏寿郎のその言葉に
ふふふ…とあげはが静かに笑うと
杏寿郎の肩に自分の腕を回して引き寄せると
自分の唇を…杏寿郎の唇に合わせた
「良いのか?あげは…。
いつもなら、紅を差したばかりで
落としてしまって。俺は…君に
怒られた記憶しか無いんだが…な」
一方的にされいた 口付けの合間に
杏寿郎がそう…あげはに
確認を取る様に訊いて来て
「杏寿郎…、貴方の…赤を…
私に…下さい…ませんか?」
「落としてしまうだけに…
なりそうだがな…。
そんな風に…君に求められるのは…
どうにも、男冥利…には尽きるがな…」
唇を求めあう様に重ね合う度に
唇の紅は…杏寿郎の唇を赤く染めて行って
自分の…唇の赤が…薄れて行くほどに
自分の…胸の奥に…彼の炎の様な…赤が…
濃く 赤に
自分を染め上げて行くのを
あげはは感じて居た
ーー
ーー
ーー
しのぶは…早い時間に回診を済ませて
ある場所へと向かっていた
「もしかしたらとは…思ってましたが、
偶然ですね。不死川さん」
しのぶが向かった先は 鬼殺隊の共同墓地で
しのぶの姉である カナエの墓もここにある
カナエの墓の前に…不死川の姿を見つけて
しのぶが不死川に声を掛けた
「ああ、胡蝶か…」