第81章 その琥珀糖はまるで
あの時の杏寿郎の贈り物が
蛍石の様な…キラキラとした琥珀糖だったとしても
私に…11年前の…あのアルビノの彼との
この…石を眺めた記憶が無ければ…
こうは…今… 私と杏寿郎は
なって居なかったのかも知れない
そう思うと…ますます…杏寿郎の言葉の通りに
あの時…に アルビノの彼と眺めていた蛍石が
琥珀糖に姿を変えて… 私と杏寿郎とを
巡り合わせて 引き合わせくれたかの様な…
そんな風に思えてしまって仕方ない…
「見れば見る程、あの店で俺が買って
君に贈った琥珀糖にそっくりな石だな」
「ええ、本当に…。良く似ておりますね。
義勇が…環に…
この石を託してくれてなければ。
この記憶も…、私自身も、
忘れたままに居ましたから…」
蛍石の入った瓶を持つあげはの手に
杏寿郎が自分の手を重ねて来て
包むようにして添えると
「あげは…、
ならその琥珀糖の様な石が
俺と、あげはを繋いでくれたと言っても
強ち間違いでも、無いと言う事だろう?
だったら、その石を…
身に付けられる形に…して貰わないか?」
そう杏寿郎が提案をして来て
「あげは、
君は…あのアルビノの彼の事を
俺がどうこう考えてしまうのではと、
そんな風に思って居るのかも知れないが。
俺は、そうは思わないし、考えないからな?
むしろ、俺は…そのアルビノの彼が
俺と君とを…引き合わせてくれたんだと
導いてくれたんだと…思いたいからな」
「アルビノの彼…かも知れませんし、
私の父が…そうしてくれたのかも知れません…。
この石には…迷いから導いて道を示してくれる
そんな効果がある…んだと、
父が言って居ましたので。
私が…ずっと…
迷いの中に居た…あの場所から、
立ち上がって進みだす、
運命を変えるきっかけに…
11年の…歳月を経て…成ってくれたのは
紛れもない…事実でありますから…」