第81章 その琥珀糖はまるで
あげはの手の中にある
その瓶を杏寿郎が指さして
「だったら、この石が
あげは…、君と俺を繋いで
引き合わせてくれた…と言う訳だな?
なら…、俺と君を…結んでくれたのは…。
君のお父上であり、
そのアルビノの彼だったと言う事だ…」
その杏寿郎の言葉にあげはがハッとする
ああ…そうだ…
まるで… この恋は…
この1粒の…琥珀糖の様な
この…蛍石が…導いてくれたかのようで
あの時… 私は杏寿郎の事を…そんな風に
異性として男性として意識する事からも
遠慮してしまって
敬遠する様な態度をとっていたのに
あの時…しのぶちゃんから
お礼だと言われて
琥珀糖を見せられた時に…
変な気を持たせたらいけないから
受け取るのも…遠慮しようかって思ってたのに
あの瓶の中の…蛍石の様な琥珀糖を見た時
これは…自分にとって大事な物…なんだって
記憶は失って居たのに…本能的に感じたから
あの…琥珀糖を…受け取る事にしたんだと思うと
あの…琥珀糖じゃない琥珀糖だったら
私はお礼をしたいとも思わなくて
普通に蝶屋敷の皆とお茶請けにしてしまって
しのぶちゃんにはお礼を言って置いてって
その程度…で…終わってしまったのかも知れない
そんな風に考えれば…
あの宝石の様な琥珀糖を杏寿郎にオススメした
蜜璃ちゃんが
あの…蛍石に似た琥珀糖を選んでくれたからで
あの…蛍石の様な琥珀糖が
私と杏寿郎と言う…そのままでは
結ばれるべき…者では無かった者同士を…
引き寄せて 結び付けてしまったのだから
あげはが自分の手の中にある
かつては父の所有物であった蛍石を眺める
こうして…蛍石を眺めている
あの時一緒に眺めていたのは…
アルビノの彼…だったけど…
あの時…彼と一緒に眺めていたこの石が
今の私の所に…戻って来て居て
今…11年の歳月を経て…
今は…こうして…杏寿郎と一緒に眺めている