第81章 その琥珀糖はまるで
自分でも…それが不思議な位で
どうしてなのか分からないが
嘘みたいに… 穏やかな気分なのだ
自分の感情は忙しいのに…
それなのに…その感情に反して
穏やかな気分で自分は居て
まるで……心の中は
波の一つもない…水面の様だ…
僅かな波紋のひとつもない…水面は…
その表面を…鏡の様に…輝かせるのだ…
それが… 彼が…
三上透真が…私に教えてくれた事
本来の…鏡の呼吸の…最も 大元である部分
その…水面を研ぎ澄ませて…
液体である水面を…鏡に変えていく…
スゥウウウウッ…とあげはが
目の前の鏡台の鏡に向かって
大きく呼吸を整えて深呼吸をすると
フゥウウウッと…ゆっくりと吐き出した
「…っと、髪を…結わなくては…」
鏡の中の自分は…
まだ髪を結っておらずに降ろしたままで
自分の鏡の中の面影には…
亡くした親友の面影を見る事が出来る
あげはが鏡の中の自分の顔に
手を添える様にして鏡面に触れると
鏡の中の自分と視線を合わせて見つめ合う
「カナエちゃん…見てて?
全部…ちゃんと…、終わらせるから…。
あの時の…私には…
受けれる事も出来なかったけど。
でも…。今の…私は…そうじゃない…」
そして…この髪に付けるのは
カナエちゃんから貰った
蝶屋敷の家族の証である
あの蝶の髪飾りでは無くて
杏寿郎から贈られた
バラの花を模した簪であると言う事
髪を櫛で梳かすと
杏寿郎の贈り物である
あんず油を髪に馴染ませて行く
ふんわりとあんず油の香りが
自分の髪から部屋に広がって
結い上げるのに油を馴染ませて行って
髪を纏めやすくすると
耳の後ろの場所で
2つに分けて結い上げてお団子にした
その仕上げとして
杏寿郎から…貰った
6輪のバラを模した簪を髪に挿す
蝶屋敷の仁科 あげは…ではない
杏寿郎の炎屋敷の仁科 あげはが…
自分の前の鏡の中には居た