第81章 その琥珀糖はまるで
蜜璃から譲り受けた スカートになっている
隊服にあげはは袖を通した
普段着てる隊服はこの形ではないが
今日は…この形の隊服を着ると…
ずっと前から決めていた
そのつもりで…あのお願いを蜜璃ちゃんに
あの時にしたのだから
同じ物ではないが…あの時…の無限列車で
あの上弦の鬼と対峙した時の事を思い出す
自分の頬に僅かに痕を残している
あの鬼との戦いの痕跡を
あげはが指でなぞった
指先に触れる…その…傷痕の感触は…
私にそれが夢じゃなかったと教えてくれる
あの時と違うのは…この隊服の上に羽織るのは
いつもの矢絣の羽織では無いと言う事
白地に銀糸の…刺繍の施された
お館様から再度 賜る事になった
鏡柱の羽織にあげはが袖を通した
この羽織に袖を通せば
きゅっと身が引き締まる思いがする
今日だけは…お館様から
”鏡柱”を名乗る事を…許されている日だ
それを許されているのと同時に…
鏡柱として…彼を…迎えなさいと言う意味でもある
鬼殺隊の柱として…鬼である彼と…
”鬼殺隊 水柱 三上透真”
私にとって彼は… 命の恩人でもあり
良き理解者でもあり… 時に師範でもあり…
そして…私を…誰よりも深く…愛してくれた人…
その彼の名を……心の中で呼ぶだけで
その声に…自分の名を…呼ばれるのを
思い出すだけで…
あの…笑顔を……脳裏に浮かべるだけで…
迷い…葛藤… 僅かな希望…
色んな感情が…自分の中に
次から次へと 沸き起こって渦巻くのを感じる
どれも…嘘も偽りも無い自分の感情だ…
それなのに… こんなにも…色々な感情が…
自分の中で渦巻いて
常に流動的にせわしなく
入れ替わりながら起きているのに…
それなのに…
それなのに…何故だか…不思議な程に…