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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第80章 それぞれの前夜




「甘露寺。これをやる」


そう言って伊黒が袖の辺りを
ごそごそと弄って
そっぽをまた向いて
蜜璃の方から視線を逸らせながら

こちらに手渡して来たのは

前に伊黒から貰って

毎日履いているしましまの靴下の新しいヤツで

「こっ、これ…、伊黒さん…ッ」

「また、やると…言ってただろう?
だから、これ、やる…、履けばいい」


「わぁ、ありがとう伊黒さん!
新しいしましまの靴下ね。嬉しいわ。
明日、こっちの新しいのを履いて行くわ!」


たかだか…靴下を1枚…

新しいのをやっただけの事に…

甘露寺は目をキラキラさせながら

嬉しそうにその靴下を掲げて見つめていて

今…それと同じ物を履いてるのだから

珍しい物でも何でもないだろうに…

だが…こうして…甘露寺と過ごす時間は…

俺にとって…穏やかで… 心休まる時間だった


「甘露寺」

「何かしら?伊黒さん」


「桜餅…。もう半分…食べれなくもない」


そう自分の耳の辺りを染めながら
視線を逸らせつつ伊黒がそう言って来て

蜜璃がその意外過ぎる伊黒の言葉に

ただでさえ大きな目が
零れそうな程に大きく見開いて

その驚きの表情が

満面の笑顔に変わって行って


「ええ。そうね。そうしましょ?伊黒さん」

そう言って新しい桜餅を
蜜璃がいそいそと半分こにして切り分けて
どうぞと言って伊黒の方へと差し出して来る


その伊黒と甘露寺の様子を

不死川が塀の向こうから伺って居て


またしても人使いの荒い

屋敷の使用人に
甘露寺の所の蜂蜜を買って来いと
お使いを言い渡されてしまって

俺の屋敷に使用人はどうなってるんだと

不死川は思いながらも

自分の屋敷からこの場所まで

疾風の如く駆けて来たのだが


来たには来たまでは…良かったが…


「どっかで…時間…潰してから来かァ…」


ボリボリと自分の後頭部を掻きながら

不死川がぼやく様にしてそう言うと

そのままその場を後にした


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