第80章 それぞれの前夜
「望月」
「はい、何で御座いましょう」
「お前も食え、たい焼き。お前達の分もある」
「旦那様」
「何だ?」
「旦那様は…御変わりになられましたね…」
「ふん。下らん。
それに対する礼は俺ではなく、
明日の使いのついでに
あげはにでもお前の口から伝えろ」
望月がその場で深く
槇寿郎と千寿郎に向けて
頭を下げて来ると
「望月、冷めない内に食え」
「あのっ、清水さんと
一条さんを呼んで参りますね」
「ああ、千寿郎、助かる」
千寿郎が屋敷の仕事をしていた
一条と清水を伴って戻って来て
縁側で5人で並んでたい焼きを食べた
「あの…父上…」
「今度、杏寿郎とあげはが帰って来たら。
皆で肩を並べて、たい焼きを食えばいい」
「はいっ、楽しみですね、父上」
そう言って笑うその千寿郎の笑顔に
大分俺は…救われている気がした
「ああ、楽しみだな」
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その頃…甘露寺の屋敷では
伊黒が蜜璃の元を
大量の桜餅を持って訪れてくれて
蜜璃の家の庭のテーブルの所で
山盛の桜餅を蜜璃が平らげているのを
伊黒が穏やかな表情をしながら見つめていて
「美味しいっ、美味しいわ~。
こんなに沢山の桜餅…、
伊黒さん、ありがとう~。
はぁ~、こんなにまだあるなんて、
なんて幸せなのかしら~?うふふふ」
「ああ。もっと食べるといい。
まだ、桜餅は…あんなにあるからな」
そう言って伊黒が縁側の方へと
その視線を向けた 縁側に置かれている
伊黒の持って来た風呂敷包み2つは
伊黒が言うには甘露寺の為に買って来た
桜餅が大量に入っている