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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第80章 それぞれの前夜



「え…、ですが父上…。
私に…父上の名代など…務まる筈が…」

「千寿郎、
そんな身構えるような事ではない。
これを…杏寿郎の屋敷に
届けてくれるだけでいい。
早い時間に屋敷を出れば、
杏寿郎の屋敷に午前の内には着くからな」

「父上…それは…風鈴ですか?」

「あって…何かなる程の物ではないが…。
あって邪魔になる物でもないからな…。
頼めるか?千寿郎」

ビシッと千寿郎が 槇寿郎の言葉に
これ以上ない位に姿勢を正して座り直すと

「勿論で御座いますッ!!
この煉獄千寿郎…っ、父上の名代っ。
未熟ながらに、務めさせて頂きたく御座います!」

「はははは、それは頼もしい限りだな。
頼んだぞ?千寿郎。俺の名代…としてな。
望月…、は、千寿郎を助けてやってくれ」

槇寿郎の言葉に望月が深く腰を折って
頭を下げると

「はい、畏まりました。
旦那様のお心遣い、この望月。
ありがたく頂戴をさせて頂きたくあります」

「ふん、勝手に言って置け。
俺はお前に気を遣ってなどおらん」

「はい、畏まりました」

「望月」

「はい、何で御座いましょう?旦那様」



「…………」


右手に湯飲みを持ったままで
槇寿郎が望月に視線を真っすぐに向けて来て

グイっとその湯飲みの中の茶を飲み干すと

コトンと縁側に空になった湯飲みを置いて

望月が新しいお茶をその湯飲みに満たした


「どうぞ、旦那様」

「望月」

「はい」


「お前には…いつも、世話になってばかりだな」

「当然に御座います。旦那様。
屋敷の手入れと、主の世話は
使用人の務めであり、使命であり、
何よりの至福の喜びに御座いますので。
私の方こそ、感謝をしております。
槇寿郎様と、千寿郎坊ちゃんに
お仕えさせて頂けていること、
杏寿郎様には…感謝をしておりますので」



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