第10章 追憶 煉獄家にて
「病気…と言えど、心臓や知能に障害のある
人もいましたが四肢の欠損や、皮膚や瞳の色で
疎まれている人もあり体は健康な人も
…おりましたし」
「甘露寺も…、自分の髪の色を
気に病んでいた時期が…あったな」
あげははそこで患者達と生活を共にしながら
看護者になる為の勉学に励んでいた
父の助けになりたいと
考えての事だったのだろう
そこでの生活について語る彼女は
嬉しそうでその生活が彼女にとって
幸せな時間だったのは言うまでもなく
優しく穏やかな父親に愛されて
そこにいる患者達からは
妹の様に可愛がられていた
本当なら彼女は今もそこで
自分の父親を助けて 看護者をしていたと
想像するに堪えない
「父がいて、みんながいて、私がいて…
毎日が楽しかった、幸せ…でした、とても。
…あの夜が…来るまでは」
その全てを狂わせたのは ある夜の出来事
彼女が12の時の事
そう“鬼‘が来たのだ
「村の外れだったので、
藤の香を絶やすことは…なかったのに…」
「それは、つまり…」
人為的に何者かが…香炉を消して
鬼を招き入れたと言うことか?
「私、以外の…その病院にいた者は…
全て亡くなったので…
内部の人間だとは…考えにくく…」
私は目の前で 次々に患者達が傷つけられて
殺されて行く中で
どうしたら良いのか分からずに
立ち尽くしていて
怪我をした患者達を救おうとしていた父も
鬼に殺され…
その時に私の手を握って
逃げようとしてくれたのが
生まれ持って白い髪に赤い瞳の
私より4つ 年上の少年だった
(彼は彼女が言うにアルビノと言う、
先天的に色素が欠乏した病なのだそうだ)
彼はいつも優しかった
私に優しくしてくれて
アルビノは陽光を避けなければならず
夜にこっそり2人で抜け出して遊んだりもした
きっとその少年は彼女にとって
初恋の相手だっただろうし
その少年にとっても彼女は…
「彼は、私を…ロッカーに押し込んで、
私を鬼から隠しました」
「彼も、死んだ…のだな」
「ええ、私…以外は全員…」
地獄の様な悪夢の 夜が明けて
私はどうしたら良いのか分からずに
その場に座り込んで 動けずにいて
いつもの時間に
村から手伝いに来てくれていた
下働きの人が来て
事が明るみに出て 大騒ぎになり