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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第80章 それぞれの前夜



ほんの僅かに 

玄関の戸に隙間が開いている事に

望月が気が付いて

あのきっちりとなさっている几帳面な性格の

千寿郎坊ちゃまが…玄関を最後まで閉め切らずに

慌てて屋敷をお出に成程に

お父上のご様子が気がかりにあったのだろうが…


望月がその完全に閉められて居ない

戸をきっちりと閉めると

玄関の外側に向かって頭を下げた



「どうぞ、お気をつけになられまして。
行ってらっしゃいませ。
千寿郎坊ちゃま。
さて…私は、明日の朝の馬車の
手配を致す事に致しましょう」



望月が馬車の手配をし終えて
屋敷の別の仕事に掛かろうかとした頃に
ガラガラと力なく玄関が開く音が聞こえて来て

誰かが来たのか戻って来たのかだろうので

望月が玄関に向かうと
そこには悲しそうな顔をして
俯いたままの千寿郎の姿があって


その様子では…千寿郎坊ちゃまは
旦那様とは合流出来なかったのだろう


「お、お帰りなさいませ。千寿郎坊ちゃま。
今、一条にでも…お茶を用意させましょう」

「すいません、
…ただ…い、ま…戻りました。
望月さん、お茶は…、要りません…、
折角…お気遣いを頂いたのに、
そのっ、…申し訳ありません」


ぽんと後ろから千寿郎の頭に
温かくて大きな何かが触れて来て

「いや、望月、お茶を用意してくれ。
たい焼きを買って来たからな、皆の分もある」

自分が知った声が
千寿郎の上から降って来て
ぱぁっとその表情が
一気に憂いが晴れた表情に変わる

「ちっ、…父上!
お戻りに…なられたのですね」

「あ、ああ。どうしたんだ?千寿郎。
そんな顔して、ああ、どこに行くか
俺が言ってなかったから、
俺を、心配してくれたのか?
それは、お前には悪い事をした…な、千寿郎」

よしよしと言うよりはガシガシと言う
力加減が正しい様な力加減で
槇寿郎が千寿郎の頭を撫でて来る

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