第80章 それぞれの前夜
「雛鶴…と言ったか。
……知って居るのか?…三上透真を…。
そうだったな…、宇髄は…、三上透真と、
…師範と…良く知った仲だったな…。
だから…だったのか?
宇髄が…あげはを…自分の妻に娶ると…
騒いでいた時期があった様にあるが…」
雛鶴がちらっと視線を畳の上で
大の字になって
眠って居る宇髄の方へと向ける
『天元様は…、
以前私達3人に…もう一人…
妻を娶りたいと考えてると
お話をされたことがありました。
そして…その方の事は、大切な人が
大切にしていた方だから面倒をみたいのだと…。
妻として娶った後も、あげは様が
誰かの元に嫁ぎたいと言う
意思をお持ちになるなら
その時は、笑顔で見送ってやりたいのだと…。
その様なお話を、
天元様からお聞きしておりました』
「そうか…、俺としては…宇髄が…
しつこく、あげはに
言い寄っていた様に見えていたが。
そう言う意味では…無かった…と言う訳か。
宇髄が、何か…おかしな気でも起こしたのかと…
心配していたんだが…、そうでなくて…安心した…」
『でも…、安心しました…。
私達も…天元様の付き添いの形で
あの様に…、煉獄様とあげは様の結納に
私達にもお声を掛けて頂けるなんて、
思ってもおりません…でしたので。
偶には…須磨の我が儘にも、
感謝しなくては…。
煉獄様があげは様を…
お娶りになられるのであれば、
天元様も…三上様とのお約束を…
果たした事になると。
肩の荷が、ひとつ
降りたと喜ばれて…ましたので…』
グイっと…用意された水を
義勇が飲み干して
水差しに用意されていた水をグラスに移す
確かに…雛鶴の言葉の通りに…
まだ完全に肩の荷が降りた訳じゃない
全てを終わらせなければ…
俺の肩の荷も
宇髄の肩の荷も下りる事はないのだ