第80章 それぞれの前夜
「と…言う事なので、
それが…私からの炭治郎君への課題です。
彼の中の、三上透真と言う鬼と、
三上透真と言う元水柱を…
その貴方の鼻で嗅ぎ分けて頂きたいのです。
期待して居ますよ?炭治郎君。
大丈夫、炭治郎君なら、出来ます」
いつの間にか…しのぶの顔が
すぐ目の前にあって…
しのぶさん…の甘い香りが…近くて…
ぼんやりと…その顔に見惚れてしまっていて
「単に…私も…、いい加減に、
兄離れを…するだけの事…ですよ~。
では…、私はこれで…。
頑張って下さいね?炭治郎君」
そう言ってしのぶは戻ってしまって
中庭に炭治郎は残されてしまった
「よしッ、俺は俺に出来る事を…しないと…ッ」
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「炭治郎?ねぇ、炭治郎ってばっ」
善逸がこっちを呼んでいる声で
炭治郎がハッと我に返った
「ぜ、善逸か…っ。どうしたんだ?」
「もう、さっきから俺が呼んでるのに
考え事してたの?俺さ、ちょっと
禰豆子ちゃんと、
一緒に散歩して気分転換して来る。
待っててねぇ~、禰豆子ちゃーん、
今、俺が迎えに行くからねぇ~。
今行くよ~、禰豆子ちゃ~~ん」
「あ、ああ。
夜明けまでには…戻るんだぞ?善逸」
相変わらず善逸は
禰豆子の事になると気持ち悪いな
まぁ 善逸も緊張してるみたいだったから
禰豆子が善逸の
緊張を解かしてくれると良いんだが
「俺も…ちょっと…、
屋根の上で瞑想でも…するか…」
蝶屋敷の屋根の上に上がると
何時も善逸達と稽古をしてる
中庭と屋敷の全体が見下ろせる
空には宵待月が見降ろしていて
月明りの所為で随分と明るい
炭治郎が屋根の上で胡坐をかくと
スッと瞼を閉じて
視覚による情報を遮断する
すぅうううっ はぁああっっと
ゆっくりと深く 呼吸を整えて
自分の意識を 自分と言う器の中から
周囲の状況に意識を広げる