第80章 それぞれの前夜
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俺が…彼の事を
三上透真と言う 元水柱について
知りたいと言った時
しのぶさんは驚いた様子だった
『え?…あの…、炭治郎君?
今、何と…仰いましたか?』
「三上透真と言う人について、
しのぶさんが知っている事を…
俺に教えてもらいたいと言ったんですが?」
『三上透真は…鬼です。
鬼殺隊が…滅するべき…存在ですよ?』
しのぶの言葉に炭治郎が
そう言う説明を求めている訳ではないと
ううん…と首を左右に振った
「それは…、分かっています」
『知ってしまえば…、知らずに居た方が
良かったと…迷う様な…そんな話でもですか?』
そう言ってこちらを見つめる
しのぶさんの顔は僅かに眉が下がっていて
困って居る様な…そんな表情をしていた
でも…俺の鼻には…そのしのぶさんの
困った様な…そんな匂いの奥に
懐かしむ様な…愛おしむ様な…
そんな…感情の…匂いが…一緒にして来て
「それでも…、知りたいと…思うのは…
しのぶさんはいけない事だと…思いますか?」
いいえとしのぶはゆっくりと
自分の首を左右に振って来て
『いいえ、…非常に炭治郎君らしい
質問で、疑問だと…私は思いますよ?』
そうしのぶが炭治郎に言うと
くすくすくすと自分の手で
口元を隠すようにして笑った
『えっと、三上透真について…でしたね。
う――ん、そうですねぇ。
それはとても、どうお答えすればいいのやら
私にも、難しいので迷ってしまいますが』
しのぶがそうすぐに答えを返さずに
自分の答えを濁らせて来る
「しのぶさんの、分かる事で良いんですッ」
『そんな顔をしなくても、大丈夫ですよ?
炭治郎君、……正直な所を言いますと。
私は、透真さんとは
戦いたくは…無いんですけどねぇ~。
でも、あげはさんが煉獄さんを選んだ以上は。
このまま…、あの人が、大人しく
あげはさんから手を引くとも思えませんし…?
それに、元々彼はこの
蝶屋敷の場所を知ってるのですから、
その気になれば…いつでも…、
あげはさんを…迎えに来れたんですよ』