第79章 一夜蜜月 ※Rー18
「ははは、これだけ厚さがあると…
布団でと言うよりも、
バラの花びらの上で眠る事になりそうだな」
杏寿郎が2つ並べて敷いてある布団の上に
敷き詰める様に置かれている
バラの花びらを見て
あげはにそう言って来て
屋敷のあちこちに敷き詰めるのに使った
あの大量のバラの花びら達を
そのまま しおれさせるのは勿体ないと
お風呂と布団の上にこうしてくれたのだろうが
こんな贅沢なバラの寝所を見ていると
クレオパトラの気分を感じられそうだ
濡れた髪を乾かして鏡台に向かって肌を整える
「杏寿郎も…、髪を乾かされませんか…?
このままでは、風邪を引いてしまいます…よ?」
「そうだな、俺は風邪は引いた事がないが…。
大事な日に体調が優れないのは、良くないな」
そう言って手拭いで自分の髪の水分を
杏寿郎がゴシゴシと拭き取るが
芯に水分を残したその髪は
何時もの様な自由奔放さはなくて
しゅんと大人しくなっていて
その肌に髪を張り付かせている彼の姿に
色気の様な物を感じてしまっていて
枕元には水差しと共に
酒器が置かれていて
「どうだ…、あげは。
床に入る前に…寝酒でも…飲むか?」
いつもなら 水は用意されているが
お酒は用意されて居ないし
寝室であるこの部屋に
今の様に白檀の香を炊きしめる事もない
これも全部…工藤さん…が
用意してくれたのかな…と
そんな事を…ぼんやりと考えながら
あの工藤さんらしい…
心遣い…だな…と感じつつ
バラを敷き詰めたのは
春日さんだろうなって思ってしまっていた
「ええ。折角
ご用意して頂いているのであれば…。
杏寿郎と一緒に、頂戴したくあります…」