第78章 待宵月が見下ろすは…罪
槇寿郎が自分の額に手を当てて
はぁ…っと大きなため息を付くと
「もういい」
「は?今…何と仰られましたか?旦那様」
とりあえず昼食を摂る様にと言われて
昼食には確かに
遅めの時間ではあったにはあったが
俺の言葉は意外だった様子で
余り感情を顔に出さない望月も
多少驚いた様子をしていたが
「もういい。昼は要らんと言ったんだ、
それは夕餉にも、回しておいてくれ。
俺は、千寿郎を連れて…適当に食って来る」
「では、千寿郎坊ちゃんと
お出かけになられるのですね?
行ってらっしゃいませ、旦那様」
そのまま屋敷で
言いなりになって食事を摂るのは
望月にまんまとしてやられた感じになる気がして
俺はつまらない意地を望月に対して張ってしまい
つまらん意地を張った結果…
今はこうして
千寿郎を連れて近くの定食屋に
こうして昼餉を食べに来て居る
「こんな風に、父上と外で
食事を共にするなんて…、夢みたいです」
早い安い美味いの定食屋なのだが
机の向かい側に座っている
千寿郎は嬉しそうに
ニコニコと笑顔を浮かべていて
まぁ これも…親子らしいと言えばらしいか
「また…、兄上と姉上も一緒に…
外でこんな風に食事を摂りたいです」
「ああ。そうだな…。杏寿郎とあげはも…
次に来る時は一緒に来ると…しよう…」
そんな話をしながら 注文をした
料理が運ばれて来るのを待っていると
直ぐに注文した定食が運ばれて来て
昼食を済ませて
槇寿郎が千寿郎と共に屋敷に戻ると
玄関に見慣れない女物の履物が置かれており
「何だ…?来客か…珍しいな…」
俺が屋敷を空けている間に
誰か客人が来ている様だった
「お帰りなさいませ。槇寿郎様…。
槇寿郎様のお知り合いだと
名乗る女性が、客間でお待ちです」
そう清水がこちらい声を掛けて来て