第78章 待宵月が見下ろすは…罪
千寿郎の口から音柱の名が出て来て
結納の日に出会った
宇髄と言う音柱の顔が
槇寿郎の頭の中に浮かんでくる
「そうか、
あんな奥方殿が3人も居る、
宇髄君が言うのであれば…、
間違いは無さそうにあるか。
なら、…口裏でも
適当に合わせてくれ。千寿郎。
君に会いたくて、
髭を剃る時間が無かったんだとでもな?」
そう瑠火の墓前で言い訳をするから
口裏を合わせて欲しいと
槇寿郎が千寿郎に言って来て
以前の父上からは考えられない事で
母上への恋文…を 父上が書かれたのも
今 こうして
髭をキチンと残さず剃らなかった事への
母上への言い訳を考える姿も
死んだ者は還らないと言っていた
あの父上からは考えられない物だった
それもこれも…全部
父上の言葉を借りると 悪い様にもあるが
姉上の影響でしか無くて
「はい、勿論です。父上っ!」
ーーー
ーー
ー
散歩と称して屋敷を出たまでは良かった
実際に散歩をして 外の空気を吸って
瑠火の墓参りをしたついでに
ちょっとした心中を漏らした事もあって
少しばかりではあるが気が紛れた
屋敷に戻って稽古を再開しても
望月には言い訳が出来ると思って
千寿郎と共に屋敷に戻ると
俺が稽古をしない様にするためなのか
竹刀も木刀も稽古着も皆
あったはずの場所から綺麗に姿を消していて
「おい、清水ッ。
俺の木刀はどこへやったんだ?」
洗濯カゴを抱えている
清水に槇寿郎が声を掛けるが
忙しそうにバタバタとしながら
俺への返事も適当にして
中庭に向かってしまって
「待て、清水!どこへ行く?俺の話が、
聞こえなかったのか…。全く…何なんだ」
その様子がおかしい
清水を追う様にして
槇寿郎が中庭に向かうと
中庭には
いつもは使って居ない
洗濯竿まで広げられていて
所狭しと洗濯物が我が物顔をして
中庭を占拠している状態で
「なッ…、
これは…どうなってる…んだ?」