第9章 療養編 煉獄家にて
「だ、そうだぞ?あげは。俺の息子達は
お前と手を繋ぎたいそうだが?」
にやっと槇寿郎が笑って
自分が居た場所にあげはを交代させると
その姿を眺めながら後ろから歩いた
前を歩いているあげはの後ろ姿に
瑠火の姿が 重なって見える
「でも…、千は父上とも、…手を繋ぎたく…」
4人が横一列になって手を繋ぐ
それは傍目から見れば
変な光景だったのかも 知れないが…
3人は笑っていて
きっと俺も笑っていて 満更では…
なかったんだろうなぁと 思っていた
「杏寿郎…」
「はい、どうかなさいましたか?父上」
「お前、さっさとあげはと…結婚しろ」
「えぇええー?ち、父上っ?兄上と姉上が
…結婚?」
槇寿郎の言葉に隣にいた千寿郎が
驚いて声を上げた
「ゆくゆくは、そうしたいと考えておりますが。
なるべく、近い内に…可能であれば。
だ、そうだぞ?あげは」
と杏寿郎に意見を言うように促されて
「その為に、どうしてもしなくては
ならないことがありまして…」
「討つのか?」
と短く槇寿郎が尋ねて
「はい」
とあげはが短く答えた
墓参りを終えて家に戻ると
あげはが父上と千寿郎と話がしたいと
2人と共に居間へ向かった
先日の父上の血液の検査データーを元にして
今後の飲酒のルールについての
指導をすると言っていた
一日に飲んでいい飲酒量や
休肝日を作るようにと説明した
「お前に…そこまで言われなくても、
…前の様にはならん」
自分の事なのにどこか他人行儀に
槇寿郎が答えた
「父上。姉上は…父上のお体を思って…」
「後、近隣でも蝶屋敷でも構いませんので
月に一度…、経過の観察と採血を…。
お薬の方はとりあえず、
ひと月分ご用意してますので」
半刻ほどして話が済んだのか
父上に呼び止められた
「杏寿郎…」
「父上、お話はお済みに?」
「ああ、まぁな。俺は今日から、
千寿郎と寝る事にしたからな。それだけだ…」
俺の返事を待たずに
それだけ言って背中を向けてしまった
そのまま歩いて行く 後ろ姿を眺めていて
ああ と合点が行って
「…ち、ち、…父上?そこまで…、お気遣い
…頂かずとも、結構ですので。…急ぐ事でも
…ありませんし。お互いの気持ちが…」