第78章 待宵月が見下ろすは…罪
「あ、あの…父上?私の…顔が、
如何かなさいましたか?」
「いや、何も…。お前が、
俺に似てると思って居ただけだ…」
ふっと槇寿郎が千寿郎の顔を見ながら
穏やかな笑顔を浮かべていて
そう言われた方の千寿郎は
大きな目を更に見開いて大きくさせていて
「そ、そうでしょうか?
あの、わ、私が…、父上に…ですか?」
「ああ、腐っても親子だと思って居た所だ」
はは…と控え目ではあったが
千寿郎も声を出して笑っていて
遅すぎる朝食を済ませると
支度を整えて
散歩に行って来ると使用人に伝えると
千寿郎を連れて屋敷を出た
「あの、父上。
母上の元へ行かれるのでしたら…」
「ああ。そうだな。千寿郎。行きがけに
花屋に寄って花でも買って行こう…」
「父上…、大丈夫です。きっと…ですが。
兄上と姉上の事は、母上が護って下さります」
千寿郎のその言葉に槇寿郎が
自分の目を見開くと
ふぅっと苦笑いをしながら
ため息を漏らす様にしてついて
その眉間を自分の手で押さえて
小さく首を左右振る
眉間を押さえていた手を離して
槇寿郎が顔を上げると
自分の顔を真っすぐに見つめている
千寿郎の顔を見つめた
「話すまでも無いと言う事か。
俺の気鬱の原因は…、千寿郎
お前には、全てお見通し…だったか」
「しかし、父上。私が言う事では
無いのかもしれませんが…、
そのっ、私に…だけではなく、
望月さんにも清水さんにも
一条さんにも…にありますよ。父上。
我々は兄上と姉上の帰還を信じましょう…」
「……千寿郎…、知った様な…口を…
いや、…違うな、…そうじゃない…」
一瞬 自分を案じて言ってくれている
その千寿郎の言葉を否定しようかと
そう思って自分のその感情を
千寿郎に向けてしまいそうになったが…
その言葉を槇寿郎が飲み込むと
すぅっと呼吸を整える
俺だけが…感じてる事…では…ない…か
俺がそう感じてる事は…
千寿郎とて…感じている事…
だが…