第78章 待宵月が見下ろすは…罪
その考えに行きついた途端に
フッと…自分の視界が開けた様な
筋道が通った様な感覚を葛葉は憶えた
「透真…、お前は…待っていたのだな。
ずっと、孤独な戦いの中に
お前は…、その身を置きながらに。
あげはが、杏寿郎と
出会うのを…待っていたのだな。
そうか…、そうなのだな…透真…ッ」
その事実に考えが
自分の中で辿り着いた瞬間に
じわっと自分の目頭が
熱くなって来るのを感じた
「透真…。全く…変わらないな…お前は。
お前と言う奴は…、そうなのだな…」
師範…と 呼ぶ声が
自分の脳内で聞こえた様な気がして
透真の笑う あの春の日の様な…
あの笑顔ばかりが 思い出される
「透真、お前は…立派に育ちすぎ…だ…ッ」
ーーー
ーー
ー
同日 煉獄家
その手に木刀を持って
屋敷の主である煉獄槇寿郎は
朝から稽古に勤しんでいた
「旦那様…、もうとっくに
日は昇り切っております。
この辺りで朝の鍛錬の方は少し、
お休みになられませんか?」
早朝の日の昇る前から
槇寿郎は稽古に勤しんでいて
朝餉の時間だと声を掛けても
その稽古を止める事は無かった
「いや、望月。今はいい。
俺は…、もう少し…続ける…」
「いえ、それは望月は了承しかねます。
先程から旦那様のお身体を案じて、
千寿郎坊ちゃまが、そちらからずっと
ご覧になっておいでにあります。
杏寿郎様が心配にあられるお気持ちは、
望月にも分かりますが。
それで、旦那様がお身体を壊されましては。
望月は、杏寿郎様にもあげは様にも
合わせる顔がございません。
どうか、この望月に免じて。
旦那様、お稽古はこの辺りに…」
望月が杏寿郎とあげはの名前を出して来て
俺が身体を壊しては元も子もないと
そう言われてしまった
元はと言えば…
あげはがこの屋敷に来たのは
酒に溺れた俺の身体を
心配した杏寿郎と千寿郎に頼まれての事…
アイツがこの屋敷に来た事が…
俺が酒を断てたきっかけには…なったのは
紛れもない事実だった