第78章 待宵月が見下ろすは…罪
そして その沈黙を破って
重々しい口調で語り始めたのだ
自分の罪の話を 彼は
本来であるならば
それを防ぎ得たのに
自分達にはそれが叶わなかったのだと
透真を鬼になる前に…止められなかったのは
救えなかったのは…
私とて…同じ罪でありながら…に
私が腹を切るならば
自分も腹を切るべきだと悲鳴嶼行冥は言った
それを罪と呼ぶのであれば
罪と罪であると言うのであれば
罪と罪と…そして 私の罪でしかない
その話をして悲鳴嶼行冥は
来た時よりも更に深く
こちらに頭を下げて 下がって行って
お館様と2人だけになる
『今日は急に、
呼びつけてしまってすまないね。葛葉。
すまないついでに、もう一つ、
私の頼みを…葛葉、君に
聞いて貰いたいんだけど、良いかな?』
お館様のお屋敷に参上したら…
そのまま 真っすぐに
自分の庵のある山に戻るつもりだった
だが…
お館様の屋敷を後にしようとした時
私に頼みたい事があると
お館様が直々に御申し出になられて
『何に…、ございましょうか…お館様』
『葛葉。君が我が子を案ずるようにして、
自分の子を案じているだろう
ある父親の元を、
尋ねてやってはくれないかい?』
その口から仰せつかった 頼みに
葛葉は小さく…口の端を曲げると
己の首を縦に振った
『……何を…、お願いされますかと…
身を硬くしておりましたが…。
その様な…、御申し出…でありましたら、
この葛葉。謹んでお受け致します』
私が…この…お館様の子供…であるなら
また…あの彼も…それは同じ事…
どうにも 我らの父上様は…
子供達の事ばかりを…
気にされ過ぎ…にあられる
私も…彼も… とうに鬼殺隊を…
退いた身であるのに…
あの頃と同じ…変わらぬ愛を…
我らに 注いで…下さる…のか…
『君が、そう言ってくれて…
助かったよ…葛葉。ありがとう…』
『では…、私は…この辺りにて…失礼を…。
お館様…、最後に…ひとつ…。
我ら…は、皆、お館様、貴方の子に…
成れたこと…、在れたこと…を
誇りに思っております…。それでは…』
葛葉が深く産屋敷に向かって
己の頭を下げた