第78章 待宵月が見下ろすは…罪
そのお館様の言葉に…
今まで自分が育てた来た…
その子供達…の顔が…脳裏に浮かんで来て
その…笑顔のひとつひとつが…
その子 その子と過ごした
修行を付けていた日々の記憶が…
次から次に…へと… 勝手に…
思い出されてしまって…
先生…と呼ぶ子も居た…
師範…と呼ぶ子も居た…
間違えて…私を…お母さんと呼ぶ奴も居た…な
溢れんばかりに浮かんでくる
記憶の波に飲まれてしまっていて
直ぐに言葉を…返せずに居た
『いえ…、お館様。それは鬼殺隊に
身を置く者は覚悟が出来ている事にあります。
特に…彼は、三上透真は…、
育手としての、私の誇りにございました。
私が水柱を退いた後に育てた弟子の中でも、
彼には一際輝く才覚がございました…が。
それは、彼が生まれ持っていた
天性の才能にございます。
私は、彼の持つそれを…
目覚めさせる手助けをしたまでにすぎません…。
それに…、私にとっては。
透真やあげはだけでなく。
自分の育てて来た弟子…の一人一人が皆、
誇りであり、愛おしい我が子の様に思っております』
私は…育手として 何人もの
鬼殺隊候補となる剣士達を育てて来た
だが… そのほとんどが…
今は…この世には居ない…
私が育てた子供達は…鱗滝が育てた子供達の様に
選別から戻らなかった事もあったし
選別を突破して 隊士になった後も
任務の中で その志半ばにして若い命を散らして行った
今までに 私が
育てて来た弟子の中で
柱まで昇りつめたのは
透真とあげはだけ…だった
『葛葉…、君が…ね。育手を退いた理由は…
知っているつもり…ではある…んだ…』
『お館様の…所為では…、ございません…。
私は…己の育てた子を…失う事に…、
心が耐えきれなかっただけの事。
鬼殺隊としての務めからも…、
友を失うばかりの日々から。
己のこの目を失った事を理由にして、
逃げた卑怯者に過ぎません故…、
全ては、……私の、この心の、弱さにあります』