第78章 待宵月が見下ろすは…罪
だが…私の知っている
自分の記憶の内のあげはは
そうでは無かった
そうでは無かったのだ
それが成し得るほどの物に欠けていた
4年の前のあの時から
あげはの時間は止まったままだったのだ
鏡柱の地位を返納し 甲の隊士となった
鬼となりし透真を討つのは
己の仕事であろうと 言って
鬼殺隊にこそは 残り留まりはしたが
その肝心の透真の足掛かりも得られぬままに
その為の術も持たずに
時間ばかりを無駄に過ごして
彼に刃を向ける決意も硬めかねていた奴が…だ
「もう…、あの…泣き虫は…、
そんな所にまで行っていた…か…。
随分と…強く…知らぬ内に、
なったものだな、馬鹿弟子…め」
あげはは守られていた
遠ざけられていた 真実から ずっと
そして… 三上透真を死んだ者として
亡き者として扱う事で
彼女を真実から 一番遠ざけて居たのは
いや 遠ざけて置きたかったのは
あの胡蝶の妹の方だ
胡蝶の妹は あげはの事も
自分の姉の様に失うのを恐れたばかりに
胡蝶妹は あげはを真実から遠ざけた…
その話の詳細は
鳴門を偶に蝶屋敷に向かわせて
あの胡蝶の妹の鴉から
情報を引き出させていたから
私はそれを知っていた 知りながらに
その胡蝶の妹の…
しのぶの行動を放置していた
透真自身が行方をくらましていて
あげはに手を出さないのであれば…
胡蝶の妹の屋敷の中の世界の中に身を置いて
元より あげはの夢であった
看護者としての道を
あげはに歩ませる事が…
以前に透真が…漏らす様に言っていた
鬼の居ない世界を…
己の手で作る事が出来たのならと
あげはには…
そうあって欲しい…のだと
それが 透真の望みでもあり
あげはの幸せになるのならと
そのままで良いかと思った…
その嘘しか無い世界でも…
あげはが幸せなのなら…と…