第78章 待宵月が見下ろすは…罪
『素直チガウ…、オ礼言エナイ…』
「悪かったな、鳴門!どうせ、私には
可愛げと言う物は備わってなどおらん」
私が 滅多とて降りる事の無い
山を 突然に降りた理由は…
私は透真との決戦を
直前に控えているあげはと
その婚約者である槇寿郎の倅である
炎柱 煉獄杏寿郎を尋ねるべくして
今の住まいにしているこの山を降りた
まだ昨日の夜明け前の
深夜と呼ばれる時間帯に
この庵を後にして
あげはが手紙に記していた
今の住まいである 炎屋敷を目指した
まだ早朝の内に
目的地であった 炎屋敷には着く事が出来た
あげはのいない場所で
槇寿郎の倅と話してみたいと
あげはがその場を離れた時を見計らって
槇寿郎の倅である杏寿郎には声を掛けたのだが
自分が編み出した天竜もそうだったが
水の分身を作る 術を…
あげはに伝えると言うのが
私の表向いての目的ではあったが
あの馬鹿弟子が あの透真に
正面から向き合って 己の刃を向ける
覚悟を決めさせた 男が
どんな男なのかと言う事に純粋に
興味を持ったからだ 私が
その男の顔を見たくなったからだ
三上透真強さを 恐ろしさを物ともせず
恐ろしいと感じない程に
あの透真に心を捉われたままで
透真を捨てきることも出来ずに
他の男とまともに向き合う事すらも
出来ずにいたあげはの事を…
その想いを知りながらに
あげはに心酔していて
あの馬鹿弟子に命を預ける覚悟を持っている
そんな心広さと器の大きさの持ち主が
どんな男なのか…と
その人と成りに興味を惹かれた
透真と向き合うに相応しいのか
知りたいと…思ってしまったからだ
どちらかと言えば… その方が大きかった
これは あげは自身の戦いなのだから……と
そう言ってしまえば
私からは何も手出しは出来ない
私は鬼殺隊を退いた身なのだから…
出来る事と言えば
多少のお節介程度の口出しだけだ
師範である私が 関わるべきではない…