第78章 待宵月が見下ろすは…罪
「どうにも…、私は…、
男と言う生き物については
分り切っていたつもりにあったが。
何故だか、肝心な事は何も分からないらしいな。
私がかつての吉原で太夫にまで、なったと言うのも。
小さな籠の中での話。所詮は小さな井戸の中。
吉原に来る男と、外に住む男は違う…とでも、
言うべきか…やれやれだな。
あの、馬鹿だ馬鹿だと言って育てていた、
あげはにすらわかっている事…なのに…、
この私には、分からんとあれば皮肉な物だ…」
そしてそのまま 視線を地面に向けた
歩いていた足を ぴたっと止めた
「いや、違うな。
それは…私にも分かっていた…のに。
私が…望んで選んだ事…だった。
そう…私は、この性分が邪魔して…、
素直になるべき時に、意地を張って
ほんの僅かにも、素直になれなんだ女だからな…」
バサッと羽音がして
女の肩に片目の鴉が止まると
スリッとその身体を女の顔に擦り付ける
『……ダイジョウブ…カ?少シ、休ムトイイ』
「鳴門…、お前も…、お前だ。
鴉なんぞの癖に、律儀な奴だな…。
私は若いと言う年齢ではないが、
年寄扱いされるでは年は取ってないぞ?
他の鎹鴉の様に、新しい隊士の鎹鴉になると言う
選択肢もお前にはあったと言う物を…。
鬼殺隊を辞めて育手になった私に、
いつまでも付き合わなくても良かったんだぞ?
だが…、鳴門。お前には…、
感謝してる…んだぞ?これでも」
『デモ…、モウ…、新シイ…、弟子ハ…』
「そうだな、もう私は弟子は懲り懲りだ…。
育手をしてて、送り出した弟子が戻らず、
新しい弟子を取るのを辞めた、育手なんざ
ごまんと…見て来たからな。
鬼殺隊をして、仲間を失う痛みとは…。
弟子を失う痛みは違う…。もっと別の痛みだ…。
…流石に、私も、少々堪えている…からな…、
自分が育てた…弟子を失うのは…な」
それ以上の事を言わずに
鳴門がこちらに身体をすり寄せて来る