第77章 鏡柱と羽織
「真っ黒のバラ…か、これにも
君が、血鬼術を受けた時と同じ様に
あの血鬼術を仕込んで来るかと思ったが…。
流石に、彼も今回はそれはしないか…。
春日、悪いがそれは…
処分して置いてくれないか。
その黒いバラは、俺と彼女が
結婚するのが気に入らない
男からの贈り物だからな」
「あのっ、春日さんっ
そのバラの花束に羽虫の様な
蜂の様な虫は…居ませんでしたか?」
「え、いえ、虫は…居ませんでしたが…。
あの、処分をしてしまって…構いません…か?
黒いバラの花は…どうにも、贈り物にするには…
その、不吉と言うか…不穏な感じがするので…。
こちらの処分につきましては春日にお任せ下さい…」
そう言ってそのバラをこちらの
視界に入らない様にしながら春日が持って
下ろうとしたのを杏寿郎が引き留めて
「いや、待ってくれ。春日…。
そのバラの処分は俺がしよう、
そのバラの意図がそうであるならば、
そのバラの処分は俺がするべきだからな」
貸してくれと杏寿郎が
春日の方に自分の手を伸ばすと
「はい、どうぞ。
こちらのございます…炎柱様」
春日が自分の手のバラの花束を
杏寿郎の手に乗せると
黒いバラの4本のバラを自分の手に取って
杏寿郎がいつになく険しい表情をしながら
そのまま廊下を歩いて行ってしまって
その場には春日とあげはが残される
どうしよう…気まずい…
話ッ… 何か…話を…しなくてはッ…
「あ、あのっ、そうそう、春日さん…ッ。
お屋敷のバラの花びらは…全部春日さんが?」
「ええ。あげは様。そうにございます。
これは、私が図案を考えましたが。
並べたのは、屋敷の皆でやりました。
お花を、あまりにも大量に発注したので。
運んで下さったお花屋さんの配達の方も、
何をするのかと疑問に思われた様でして。
主旨をご説明いたしました所に、
お手伝いをして下さいましたので。
春日に好きにしてもいいと任せると、
炎柱様が仰られましたので、春日の
好きに致しましたまでにあります」