第77章 鏡柱と羽織
そうだった…春日さん…
気配を消すのが…凄い上手かったの忘れてた…
普段の気配で気配を憶えていたから…
すっかり油断してしまってた…
『すみません、炎柱様。あげは様。
お二人で水入らずを
なさっている所に水を差しまして。
あの、こちらが…
玄関の所に差出人不明なのでありますが。
あげは様宛に、今朝方届いておりまして。
差出人につきましての、
お心当たりが御座いますかと、
お尋ねしたく…あるのですが』
そう言って春日があげは宛ての贈り物が
玄関に届けられていたと言って来て
こちらになりますと春日が見せて来たのは
真っ黒のバラが4本
カスミソウなども加えられておらずに
それだけで纏められた花束で
「真っ黒…の、バラの花…にありますか…」
黒いバラの花束と言うだけで
送り主が誰か…と言う事は
贈られた あげは本人にも 杏寿郎にも
分り切っている事でしかなく…
”死ぬまで気持ちは…変わらない…”
満月の夜を明日に控えている今日に
このバラをこの屋敷に届けたと言う事に…
意味がある…のだろう…
あくまでも… 彼の中の彼は…
彼女から…
あげはから手を引くつもりは無いらしい
あくまでも… この黒い4本のバラは
その意思の形でしかなく
あげはに君は俺の獲物だとでも…
あの彼は言いたいのだろうが…
杏寿郎が春日の手にある
その黒いバラの花束に目を向けるも
その黒いバラの花からは
鬼の気配はもう感じられない…
恐らくは適当な人間に金でも握らせて
屋敷までこの花束を
運ばせでもしたのだろうが…
そうまでして…彼にとっては
贈りたいほどの…物なのだろうな…
これが…俺達に対する…
攻撃性を秘めないのであれば…
このバラの花びらに秘められているのは
只の純粋な… 想い でしかない
狂気に満ちた…には…違いがないが…な