第77章 鏡柱と羽織
あげはが赤くなった顔を
自分の両手で押さえつけていて
色んな感情が忙しいのか
自分の頬を押さえながら
その表情をクルクルと変えていて
そんな姿を見ていると 可愛らしいと
俺は感じてしまって
仕方がないのではあるんだが
「出来て…いると言う事ですね…」
「ああ。君が春日に、
今日の食事の食材を依頼してると
工藤から聞いたからな。だから俺が
工藤に依頼して置いたんだ。
あげはが、春日が用意した食材で
料理が作れそうにない時は頼むとな」
「と言う事は、杏寿郎。
食事の支度だけでなく…て、
その後の入浴の支度とかも…
全てにありますか?」
自分の身体に
あげはの身体を持たれかけさせて
よしよしとあげはの
背中をその手が撫でて来る
「工藤にはな、屋敷の者を
明日にはいとまをと言ったんだがな。
どうも…、父上から聞いたらしくてな。
明日の日暮れまでは、
務めたいと言って来たんだ」
「そうでありましたか…、
その辺りは…流石の工藤さんにありますね。
杏寿郎も、予想の
範疇外にありましたでしょう?」
「ああ、だから…工藤の
その言葉に、甘える事にしたんだ」
そう杏寿郎が言って来て
意外だとそう感じてしまった
でも…杏寿郎は
この屋敷の使用人の皆の気持ちを考えて
そう判断をしたんだなと思うと
それも…杏寿郎の今まで…が
あったからなのだろうなと
あげはがしみじみと考えていると
グイっと杏寿郎が全開になって居る
あげはの前を急いで合わせて来て
「どうした?何かあったのか?春日」
そうここからは死角になる方向へ向かって
杏寿郎が声を掛けるから
ババっと乱れていた着物を凄い速さで
あげはが合わせて紐を縛って
急いで形だけを整えると
「杏寿郎。かっ、春日さんが、
そちらに居られるのでありますかッ…」