第77章 鏡柱と羽織
杏寿郎が…そう 私に求婚を
改めてしてくれている意味は…
それが…今日だから…だ
明日が満月の夜になるから…
今日…の内に あの時のあの5年前の
やり直しを…したいと彼は思ってるのだろう
そう言って抱きしめられる
杏寿郎の腕の力に苦しいと感じつつも
もっと抱きしめられたいと思って居て
「んぅ、…杏寿郎…、もっと…強く…、
抱きしめて…頂きたく…ありますッ。
私と、これから先も…
共に、在って…下さい…。杏寿郎。
私の隣に、杏寿郎、
貴方に居て頂きたく…あるのです。
杏寿郎…、貴方を…愛して…おります…。
愛してもおりますし、
信じてもおりますよ?杏寿郎。
貴方が、私の全てを…
そうして下さるようにして。
私も、貴方の全てを
そうしたくあります…。杏寿郎」
深く求めて 口の中の舌を攫う様に
侵入して来た彼の舌に自分の舌を預ける
そのまま…杏寿郎が
あげはの耳元に口を寄せて来て
「あげは…、いいか?」
そう問いかけられて…
この広間で杏寿郎から
炎柱付きを命じられた時の事を思い出す
「んんっ、…杏寿郎…」
「何だ?あげは。
あの時、ここでそうした時の様に。
また、夜に…と言うつもりでもあるまい?
俺の求婚を、改めて受け入れて貰ったんだ。
今、そうするのは…自然の事だろう?あげは」
「そっ、それは…、その、…杏寿郎が
お座りになって居る上に、
…私が…乗る…のにありますか?」
「そうしないと、その羽織が…
皺になってしまうだろうしな…。
それを着たまま…の、あげは、
君と、そうしても?いいか?」
その杏寿郎からの申し出を
断わらなければと言う意思と
このまま彼を受け入れたいと言う意思とが
自分の中でせめぎ合うのを…感じながら
返事らしい返事を返せないままに居て
「なら…、あげは。君の、その沈黙は…
俺の都合のいい様に…解釈するより…
仕方がなくなってしまうが…良いんだな?」