第77章 鏡柱と羽織
舞ながら飛び交う蝶の中で
天女の羽衣の様な白い羽織りが見えて
あの時に…時間が巻き戻った様な
そんな錯覚を感じる
「あげは…、君は…美しいな…。
天女か妖精か何かの様だな…。鏡柱様…」
そうこちらを鏡柱様と呼んで来る
杏寿郎の顔に
あの初めて杏寿郎と会った時の
あのあどけなさの残る
少年の杏寿郎の顔が重なる
「…杏寿郎…?」
「俺と、結婚して頂きたいのだが。鏡柱様。
俺の命が…、今、ここにあるのも…、
あげは…、君が俺の命を、2度も
今生に繋ぎ止めてくれたからこそにある。
君に救われたこの命であるからこそに、
あげは…、君と共にこの先の人生を生きて。
君と共に俺を…、
在らせてはくれないだろうか?」
杏寿郎があの時の様に
5年前に伝えて来た事をなぞりつつも
今の気持ちをこちらに伝えて来てくれて
あの時は…突然の杏寿郎からの求婚に
戸惑うばかりにしか無かった自分が…
5年の時を経て…今こうして…
こんなにも…杏寿郎からのこの言葉が…
胸の奥まで届いて 染み入って…
嬉しい…と感じているのだから…
人生なんて
どこでどこに繋がってるのかなんて
分からない事ばかりな様に感じてしまう
「ふふふ。杏寿郎は…、また、
私に…求婚なさるのでありますね」
「だが、あの時…。5年前の俺が君にした
あの求婚とは、今の求婚は意味が違う事位は…。
君だって、言わずもがな
分かってくれているだろう?あげは」
こっちからでの言葉での
返事は要らないとでも言いたげにして
杏寿郎に口付けを求められて
求められるままに唇を重ねられて貪られる
「あげは…、俺の為に…生きてくれ…。
鬼殺隊の中には、君がしようとしてる事の
全容を知りもせずにして、否定して来る者が…。
現れるかも知れない…、だが…。
俺は…君が何を思って、考えて…
それをどんな想いで選んだのかを知っている。
何も、恥じる事も悔いる事も無い。
誰が何を言おうとも、君のその選択は正しいと。
俺が、そう信じて生きる様に、在る様にして。
君にも、そうあって欲しい…、俺を信じてくれ
あげは、そう思ってるんだ。俺は」