第77章 鏡柱と羽織
「私は、蝶屋敷の皆とは
家族も同然にありますが…。
その事実が、この先に杏寿郎と
結婚したとしても変わる事はありませんが。
今の私は…、杏寿郎…。
貴方のあげはにありましょう?
私は、貴方と共に
この先を生きると決めましたので。
この先も、末永く…貴方のあげはで
居させて頂きたくありますが…。
何か…、先ほど言いかけておありに
あられましたか?杏寿郎」
杏寿郎の願いを
あげはが聞き入れる事に承知すると
先程の言葉の続きがある様に感じて
あげはが杏寿郎にそう問いかける
「なら、あげは。
頼みついでにもうひとつ。
君に頼まれて欲しいのだが。
夕飯の支度の前に、
俺の我が儘に付き合ってくれないか」
簪の事以外にも
我が儘に付き合って欲しいと
杏寿郎がこちらに申し出て来て
「え、ええ…。それは構いませんが…」
ついでの様に杏寿郎が申し出て来たので
すぐに叶える事が出来る様な
そんな用事なのだろうと
こっちはあまり深く考えずにそれに了承をして
こちらに差し出して来た
杏寿郎のその手に自分の手を重ねて
その手を杏寿郎に握られる
先程まで濃密な時間を交わしていた
瞑想部屋を出ると
杏寿郎に手を引かれて
屋敷の廊下を移動して行く
「あっ、あの…、杏寿郎…どちらに…?」
「来れば分る」
そのまま 手を繋いだままで
手を彼に引かれるままに
屋敷の中を移動して行って
辿り着いた先は
中庭を望む様にして
炎屋敷の中央に位置する屋敷の広間だった
ここは私がこの屋敷に来た時に
炎屋敷付きではなく炎柱である
煉獄杏寿郎付きを命じられた場所だ
その広間の前に立って ふと
あげはは 違和感を感じた
この炎屋敷の中にある
他の部屋はあのバラの
花びらの演出に使用したのに
何故か この屋敷で一番広い
この広間には
それがされていた形跡がなくて
違和感をありありと感じてしまう
どうして…この一番 屋敷で広いこの部屋を
それに使わなかったのだろうかと…
そうあげはが疑問に感じていると