第9章 療養編 煉獄家にて
見せるか 触らせるかどっちかしかないし
「そ、それは…
どっちか選ぶしかないやつですよね?」
「ああ、君が選ばないのなら、
俺が決めるが?いいのか?」
彼女がどっちを選んでも
彼女は恥ずかしがるだけだろうし
俺にはメリットしかないが
まぁ あの鬼が残した傷を見て
多少の苛立ちは覚えるだろうがな
「……ふ、触れて…貰っても?」
見られる方が恥ずかしいと言うわけか
そうか…成程…
「そうか、…どの辺りだ?」
無駄に触ると怒られかねんし
場所を確認すると
この辺りと彼女が寝巻きの上から押さえた
寝巻きの下に手を滑り込ませ
そっとその傷のある辺りを撫でると
滑らかな柔肌に触れる
まるで絹の布でも
撫でているかのような感触だ
すべすべした感触が心地いいとも感じる
撫でている側が 心地いいのか…
彼女が許してくれるのなら
いつまででも 触っていたいとさえ思う
その滑らかな肌と質感が違う部分があった
「ここだな?」
彼女がコクリとうなづいた
「ん?大きくは…ないか?」
「え?大きい…?」
「傷の話だが?」
「15針ほど…縫ってありましたので…」
触れた感じの質感の範囲からして
15センチ以上20センチ近くある
「見せるのは?難しいか?」
「人に見せる所にある物じゃないので…、
見せるとしたら…その」
「俺だけ…だな?」
「…はい」
「そうか、それなら…仕方ないな」
そのあげはの返答に満足したのか
彼女の乱れていた寝巻きの裾を直した
ーー次の日の朝
朝食の時間になって居間に槇寿郎が行くと
誰も居なかった
まぁ 2人がいないのならまだわかるが
なぜ 千寿郎まで居ないのか?
しばらく考えてハッとした
「まさか…、様子を見に行ったとか…
じゃねぇだろうなぁ?」
足早に東の離れに向かうと
2人が使っているはずの部屋の前に立ったが
様子がおかしい 静かすぎる…
あまり息子の濡れ場なんぞ…見たくはないが…
そっと部屋の襖を開いて中を覗くと
すやすやと穏やかな寝息が聞こえてくる
それも一つじゃない…
布団の盛り上がり方に違和感を覚えた
「ん?…2人じゃ…ない…?だと…?」
杏寿郎とあげは そしてなぜか千寿郎まで
穏やかで幸せそうな顔をして眠っている