第75章 (100+1)+1+〇=108
その簪は左右2対になっていて
バラの花が3輪づつ
そして…その左右にそれぞれに3輪並んだ
バラの花に寄りそう 蝶の姿形にも見覚えがある
アサギマダラだ
その繊細な細工で表現されたアサギマダラは
ふぅっと息を吹きかければ ヒラヒラと
そのバラの花の上から
飛んで行ってしまいそうな程に
精巧な作りをしていて
そのアサギマダラを眺めながら
以前に杏寿郎から贈って貰った
108本のバラの花束の内の6本を
私の髪に…この蝶の髪飾りと交換して
挿してもいいかと言われた時の事を
あげはは思い出していた
「あの時に俺が、君の髪に挿した…
6輪のバラの花は枯れてしまったが。
俺の手で、その君の髪に、
改めてバラを6輪、挿させてくれないか?」
スッとその手が
あげはの髪から蝶の髪飾りを外すと
赤いバラの簪をその髪に挿した
「この簪は、しっかりとしていて。
髪を纏めるには、問題は無い様ですが。
それでありつつ、危なくない様な、
素材で出来てるのですね…」
髪に挿す部分は
硬い素材を使うのが一般的であるが
杏寿郎が用意してくれた簪は
ふにゃふにゃではないが
外力が掛かると曲がる様な素材で出来ている様だ
「ああ。でないと、戦って居て
頭部に刺さるような事になるだろう?」
「簪の材質…が
どうこうと、言いますより。
頭部を強打する程の場面は…、
致命傷にありますが?
簪が刺さる刺さらない以前に、
その様な衝撃があれば、頭蓋骨骨折しております。
しかし、それも…杏寿郎のご配慮にありますね。
ああ、杏寿郎…この6輪のバラは、
あの時の6輪のバラにございましたか。
私がそれを留め様とした様にして、
杏寿郎も留めて下さったのでありますね…。
嬉しい…」
そう言ってあげはが目を細めて
その時の事を自分の記憶から
呼び覚ましている様だった
「前に言って居なかったか?
同じ物に関連する記憶を重ねて残すと。
脳の中にいつまでも留まるんだと…。
俺に、あの店で話してくれただろう?」