第74章 ちょっとした逢引
「あげは、これが
彼の為の最善と思えないのならば…
君にとっての最善は?なんだ?
彼の中の鬼の彼だけを、狩る事か?」
杏寿郎の言葉に その術も知らないのに
そうであったならを想像してみる
しばらくあげはが黙ったままで考え込んで
いいえと首を左右に振った
「杏寿郎、もし…それが叶うとしましても。
透真さんが、それをお許しになるとは思えません。
鬼になった、もう一人の自分に
己の身体を良い様に
されてさせられた事とは言えど、
人の命を奪った事を…」
「彼は許さないだろうな…、
もしそれが出来たとしても。
彼は自分の罪をゆるす事が出来ずに、
鬼殺隊の柱として取るべき形で
自分の責任を取るだろうからな」
お館様がお望みになられた事… それは
三上透真に 彼の 鬼殺隊の水柱としての
尊厳のある死を…もたらす事…にあった
「お館様が、
三上透真の討伐をお命じになった時。
あげは、君にあの羽織を返して、
三上透真との1戦だけに
君に鏡柱を名乗る事をお許しになられた。
俺はずっと、お館様の
その真意を考えていたんだがな。
俺が思うに…それは、
お館様のご意思ではなくに…」
「杏寿郎…、それは…
理解をしているつもりにあるのです。
彼の最期を与える役に、
彼が私を選んだ…のでありましょう。
ですから、私は鬼殺隊の鏡柱として、
彼に死を与えなければなりません」
誰一人として望んでいない彼に死を…
与える事しか選べない…
皮肉な事にも あの時は幾ら考えても
憶測にしか過ぎなかった物も
いざ この時を間近に控えた今になっては
その憶測が確固たる確信に
杏寿郎の中で変わっていた
その辺りは…あの時 俺にあの桜の下で
終わってからが大変だと言った
宇髄は預言者…かとも感じてしまうし
恨めしいとも思う感情もあるが
その宇髄の言葉の裏に込められている
”あいつの分もあげはを頼むわ”と言う言葉が
宇髄の声で 自分の脳内で再生される