第74章 ちょっとした逢引
この戦いに赴く前に
出会って置きたい人は居ないかと
そう言う意味で杏寿郎としては
私の意向を確認したいのだろう
いいえ…とあげはが首を左右に振る
鬼殺の仕事をしている身なのだ
…彼との戦がどうであれ
いつ自分が死ぬのかなんて…事は
わざわざ意識する必要もない事だ
「私の父や…カナエちゃんには…、
済んでから報告に行きたいので。
それに、蝶屋敷の皆にも
結納の時に三好小母さんにも出会えましたから。
…一緒に…戦ってくれる皆には、
明日になれば出会えますから」
そう… ずっと…
会いたいと願っていた相手である
透真さんにも…
明日になれば顔を突き合わせる事になる
私は…三上透真と言う鬼を狩りに行くのか
三上透真と言う人を…
苦しみから解き放って眠らせる為に行くのか…
「そうだな…、彼には…
否が応でも明日になれば
お互いに顔を合わせて、
剣を向け合う事になるだろうしな。
あげは、思う事が多いだろうが…。
明日の月が昇るまでの君の時間を、
俺にくれないだろうか?」
「ええ。勿論…。
杏寿郎に言って頂かずとも、
私からお願いしたい位にありますよ?
杏寿郎…、私に…彼と向き合う為の勇気を…
与えて頂けませんでしょうか?」
考えるつもりがなくても 考えてしまう
彼の事 彼等の事…考えても考えても
これが本当に最善なのかと 迷ってしまう
堂々巡りするばかりの思考から
意識を何度反らせても
またそこに戻って来てしまう
こうして杏寿郎が私をそれから離そうと
外に連れ出してくれたのも…分かって居るのに
その日が 1日 また1日と近づくにつれて…
そう考える時間が自分の中に増えていた
三上透真と向き合う為の勇気が欲しいのか
それしか考えられない頭を
そこから離して欲しいのか
そのどちらでもある様な
そんな願い事を
あげはが杏寿郎に対してして来る