第74章 ちょっとした逢引
「ここの蕎麦も、鴨料理も絶品だな」
「ええ、本当に美味しいですね」
鴨料理にも力を入れている様で
鴨を使った料理も他にもあると言うので
鴨のささみのお造りと柳川風それに
鴨の肝臓を使った茶わん蒸しを注文した
鴨のささみも独特の鶏肉にはない
旨みがあって美味しかったが
それよりも 初めて食べた鴨の肝臓は
かわはぎの肝の様に濃厚な
脂を持った風味豊かな味わいで
杏寿郎もその美味しさを絶賛していて
茶碗蒸しのお代わりを沢山お願いしていて
余りにも美味しかったので 蝶屋敷の皆を
ここに連れて来てあげたいなぁとかって
そんな事をあげはがぼんやりと考えていると
「どうせ、あげは。君の事だからな。
俺にはお見通しだぞ?蝶屋敷の面々を
ここに連れて来たいとでも考えてたんだろう?
この店の二階には、
ちょっとした宴会や法事に使える
大きめの個室があるからな。
全てが済んだら、また皆で来よう」
全てが済んだら…
その杏寿郎の言葉が ズンっと今までよりも
重く 自分の胸の中に響くのを感じて居た
今までに交わして来た約束達…も
いつかの話…だった 今までは
でも 今は違う…
それはいつかの話なんて
未来の話なんかじゃなくて…
もう 彼との決着をつける
満月の夜は…明日なのだから
明日の…その先にある話でしかなくて
いつかの話なんかじゃないのだと…自覚していて
私がそれを感じ取っていると言う事は
目の前に居る彼も感じ取っているだろう
それを感じて居るからこそ…
杏寿郎は私に”また来よう”と言ったんだ
「ええ。そうですね、杏寿郎。
皆と一緒にまたお邪魔させて頂きましょう」
「さて、この後はどうする…?あげは。
冨岡や胡蝶や、竈門少年達や
宇髄に不死川に甘露寺とは
明日になれば否が応でも出会えるが…」