第9章 療養編 煉獄家にて
そう言って
呼吸をせずに動きだけをして見せた
見やすい様にゆっくりと速度を落としてある
それを真似するように促して
千寿郎に真似をさせると癖にならないよう
型にそう様に修正して行く
「こうでしょうか?」
何度かそれを繰り返してる内に
千寿郎の昇り炎天も様になって来ていた
「そうそう、いい感じ。私も、
肋骨折れてるから、そんなに深い
呼吸はできないけど…」
呼吸を合わせるから見ててねと言って
「炎の呼吸 弍の型 昇り炎天」
「どうして、アイツは家にしか伝わらない
炎の呼吸が…あそこまで忠実に
再現できるんだ?」
「それに、かなり炎も濃いですし…」
まれに隊士に炎の呼吸に適応した隊士がいて
その度に代々 家の継子にして育てはしたが
幾ら 炎の呼吸を極めても
煉獄家が代々 炎柱を務めていたのだ
柱にはなれない
「彼女の日輪刀は、七色でした。恐らくは
複数の呼吸への適応を持っているのかと」
「何かね、私は色んな呼吸が
使えるんだけどね。どれも中途半端でさぁ?」
「中途半端だなんて、そんな…
素晴らしいと思います」
「だったら、見てみる?他の呼吸も」
あげはの言葉に
千寿郎の顔がパッと明るくなる
「いいんですか?ぜひ」
色々な呼吸を使うのを見せるあげはを
槇寿郎がぼんやりと眺めていた
「惜しいな」
「惜しい…とは?」
「アイツが男だったら、最強の柱にでも…
なれただろうに…な。単に器用貧乏…なだけか」
様々な呼吸への適性
それを使いこなせる器用さ
それに耐えうる恵まれた身体能力
そして 彼女にしか使えない鏡の呼吸
「あの時、戦った上弦の鬼も…同じような事を
言っていたが。俺はそうとは、思いません」
「何故だ?」
ー「強くなって、周りの事何も見えなく
なるような強さなら私はそんなの、
要らないよ!強くなくってもいい。
私の目に映る所が、私の手の届く所
だけでも…守れたら…それでいい」ー
あの列車であげはが
言っていた言葉を思い返していた
「剣の才能があろうとなかろうと、
柱でなかろうと、彼女が自分の信じるものを
貫くのに、必要な物ではないようでしたし」
「なるほど…、そうなのかも知れんな。所で…」