• テキストサイズ

その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第9章 療養編 煉獄家にて


懐から槇寿郎が小さな木箱を取り出すと
杏寿郎の前にそっと それを置いた

「受け取れ」

「これは?」

自分の前に置かれた木箱を手に取り
杏寿郎が箱を開くと
中には櫛が入っていた

デザインこそ古みを感じる所もあるが
作りのしっかりとした上等な品物だとわかる
特別な贈り物に相応しい 櫛だった

「瑠火から…預かってたんだ。お前達、
それぞれに…大切な相手ができた時に
渡してくれと…」

「母上が…これを…俺に…?」

気が付いた事がある
父上がこれを俺に渡したと…言う事は

それは つまり

「父上!!…お許し、頂けるのですか?」
「まぁ、アイツの事は曲がりなりにも
…多少は俺も知っている…つもりだからな」

くいっとお猪口を干すのを見て
杏寿郎が次を注いだ

自分のお猪口の水面に
月を写すと 遠い目をした

「とにかく…良く泣く奴だった。
変わった…泣き方をするやつだったな。
泣き喚いたりするんじゃなくて…
涙だけ流す…そんな泣き方だった」

俺が何も返さないでいると
父上は更に話を続けた

「アイツはいつだって、人の為ばっかで
自分が大怪我してたって、
そっちのけだったな…」

今のあげはもその通りだし
その性分は持って生まれた物なのだな
俺を助けたあの時だって そうだった

「杏寿郎…」

槇寿郎がこっちを真っ直ぐに見ていた
「お前が…、アイツを支えてやれ。
アイツの死ねない理由に…
お前がなってやれ!」
「彼女が自分を蔑ろにする分、
俺が彼女を大事にすればいいと
…思っています」

ふと中庭へと目を向けて見ると
稽古着の千寿郎とあげはの姿があった
人に稽古を禁じておいて自分はするのかと
多少の不満がないわけでもないが
恐らくは千寿郎があげはに頼んだのだろう

木刀を構えた千寿郎に何やら言って
指導している様だった

一つ一つの動きを止めて
コマ送りの様に確認させている
いくつかそれをして動かさせてとしていて
ある事に気が付いた

「昇り炎天か…」
槇寿郎がボソッと言った
「ええ、確かにあれは、昇り炎天ですが…」

「じゃあ、ゆっくりやって見せるから
…見ててね?」




/ 1961ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp