第70章 町行かば 再び
「そうか?もう、それは…あげは。
俺に隅々まで、君のその身体は
知り尽くされてるとでも?」
「その…、杏寿郎…が、
隅々までご覧になられるからにありますッ」
自分で言って恥ずかしかったのか
あげはが自分の両手で
その顔を覆ってしまって
「こんな風に、
君と馬車に乗ると色々と思い出すな」
杏寿郎とは 何かと一緒に馬車で
移動する事は多いが
何時の話の事だろうか?
「と、仰いますのは…、
何時の話にありますか?
前に、街に出掛けた時にありますか?」
「あげは。あの時の君は、
柱には戻る気は無いと俺に言ったが。
今はどうだ?あげは。君の中で、
その気持ちには変わりは無いか?」
その杏寿郎の言葉に
いつの事の聞かれているのか
あげはにも分かって
まだ今の関係になる前の
私が杏寿郎からの
求婚を断わっていた時の話だと気が付いた
「でっ、ですが。杏寿郎。
私が、柱に戻ってしまっては。杏寿郎と一緒に
過ごす時間が、今以上に減ってしまいますよ?
杏寿郎が、私を貴方の専属に、
炎柱付きになさったのにありますよ?
私は、柱には戻りません。杏寿郎、
今も、この先も、私は貴方と共にあります」
「ああ、そうか、そうだな。俺が、君を
そうしてくれと、お館様に頼んだんだったな。
あげは、今も、これからも俺と共に在ってくれ。
俺と、生きて、この先にある未来へ進もう」
ギュッと杏寿郎の手で両手を握られてしまって
その握っていた手を今度は
指と指を絡めて繋がれてしまうと
そのまま 杏寿郎からの口付けを受け入れる
「んっ、ふ…、杏寿郎…」
「…ハァ、あげは。
…紅が唇から…、落ちてしまうと
俺に怒らなくていいのか?」
「んんぅ、それは…もう、
言うだけ無駄だと気が付いたので」
ふふふとあげはが笑うと
同じ様にして杏寿郎も笑顔になって
一度遠慮をして離した唇を再び
あげはの唇に重ねようとして来て